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自然災害によって毎年9,000万人分の雇用が失われる―世界銀行が132カ国で試算

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自然災害によって毎年9,000万人分の雇用が失われる―世界銀行が132カ国で試算 世界では毎年、災害と過酷な熱波により、約9,000万人分のフルタイム雇用に相当する仕事が失われています。 出典:Adobe Stock

災害と聞くと、損壊した建物、浸水した街並み、破壊されたインフラを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、目には見えにくくても同様に深刻なのが人々の雇用や生計への影響です。

世界銀行が新たに発表したレポート「自然災害による世界の雇用損失」(原題:Worldwide Job Losses Due to Natural Hazards、レポート全文は英語)は、132カ国を対象に、こうした隠れたコストを初めて定量化しました。同レポートは、災害と過酷な熱波により、毎年約9,000万人分のフルタイム雇用に相当する仕事が世界全体で失われているという実態を明らかにしました。

失われたり制限を受けたりするそれぞれの仕事の影には収入を絶たれる労働者がいて、家族は家計に苦しみ、中小企業は経営難に陥り、そしてコミュニティは立ち直るまで何年にもわたって影響を受け続けます。

 

自然災害は雇用と生産性を脅かす

本レポートによると、洪水、地震、サイクロン、津波といった突発的な災害により、毎年平均して約940万人分の雇用が失われています。なかでも地震と洪水による影響が最も大きく、発生頻度の高さに加えて、経済活動に及ぼす混乱の規模の大きさがその要因です。

大規模な災害が発生した場合、雇用への影響は年間平均の損失をはるかに上回ります。また災害は収入や雇用を直撃するだけでなく、資産を損ない、消費を縮小させます。雇用損失は、災害がもたらす経済的打撃の一側面にすぎないのです。

一方、雇用への影響が最も大きいのは、ゆっくりと、しかし広範囲に広がる過酷な熱波です。高温下では、特に農業や建設業といった屋外での肉体労働において、安全に働ける時間や環境を著しく制限します。その結果、毎年約8,000万人分の雇用が失われています。突発的な災害と異なり、熱波は労働生産性を直接低下させるため、その経済的損失に占める雇用損失の割合は特に大きくなるのです。

労働者にとって、こうした雇用「相当」損失は、必ずしも失業を意味するわけではありません。失業以外にも、実態としては、労働時間の短縮、生産性の低下、収入の喪失、あるいはより不安定な働き方へのシフトなどとして現れます。開発途上国では、非正規労働者が労働力の大半を占めており、彼らは誰よりも早く打撃を受け、誰よりも遅く回復する立場にあります。

 

最も大きな打撃を受けるのは最も貧しい労働者

災害による雇用損失の負担は、著しく不均衡な形で分布しています。本レポートによると、低所得国の雇用損失率は高中所得国の2倍程度、高所得国と比べると6倍以上に達します。

国内に目を向けても、格差は同様に鮮明です。本レポートによると、雇用損失の負担は最も貧しい層に集中しています。たとえばトルコでは、災害による雇用損失の41%が、人口の最も貧しい20%の層に集中しています。

これは、災害が既存の脆弱性に乗じて被害をさらに広げるという現実を映し出しています。貧しい世帯ほど、気候変動の影響を受けやすい産業に従事し、肉体労働に依存し、貯蓄や保険を持ちにくい傾向にあります。災害が発生した際、こうした世帯はリスクに対する備えが乏しく、生計の再建にもより大きな困難を抱えます。一時的なショックが長期的な貧困につながるケースも少なくありません。

レジリエンスへの投資が雇用と生計を守る

 

本レポートが浮き彫りにした災害関連の雇用損失規模は、効果的なリスク管理が雇用と生計の保護に不可欠であることを示しています。世界銀行グループにとって、「効果的なリスク管理」とは、投資、制度改革、都市開発戦略にレジリエンスを組み込むことを意味します。単に災害被害を軽減することにとどまらず、生産性向上、経済発展、雇用創出といった積極的な目標への貢献も視野に入れた取組みです。私たちは、以下の三本柱のアプローチを採っています。

  • 基盤インフラの整備は、防災の第一歩です。世界銀行グループは、強靭な道路、洪水対策、エネルギーシステム、水インフラへの投資などを通じて、災害発生時においても企業の事業継続と労働者の雇用維持を支えています。人的インフラも同様に重要です。保健医療、教育、職業訓練、社会保護といった各システムは、労働者とコミュニティの回復力に影響を及ぼします。たとえばバングラデシュでは、世界銀行の支援を受けたプログラムが、洪水対策インフラの整備・修復および生計支援を一体的に実施したことで、2024年の洪水で被害を受けた家計と地域経済の迅速な復興に貢献しました。
  • ガバナンスと規制環境の強化は、各国が危機にどれだけ備え、迅速に対応できるかを左右します。世界銀行グループは各国政府と連携し、早期警報システム、緊急対応能力、資金調達手段の事前確保など、災害への備えを政策に組み込む取組みを支援しています。その結果、現在65カ国以上が世界銀行の「危機への備え・対応のためのツールキット」を活用しています。たとえばルワンダでは2025年、​災害リスク繰延引出オプション(Cat DDO)付きの開発政策融資を通じて、リスク情報の整備と関係機関の連携強化が進められ、気候関連災害リスクの増大から雇用と経済活動を守る体制づくりを後押ししています。
  • 民間資本の動員は、資金調達ギャップを埋めるうえで不可欠です。国際金融公社 (IFC)および多数国間投資保証機関(MIGA)は、投資、保証、政治リスク保険を通じて、強靭なインフラと生活に不可欠なサービスを支援し、公的資金だけでは不十分な分野への民間投資を呼び込んでいます。たとえばトルコでは、MIGAの支援を受けた病院が、2023年2月の地震の震源付近に位置していたにもかかわらず、倒壊を免れて診療を継続しました。これは、大規模災害発生時においても、適切に構築された民間資本の仕組みが社会インフラサービスとそこで働く人々を支え続けられることを示す好例です。

これらの取組みが示すのは、リスクに基づく開発こそが雇用保護の要であるということです。防災を都市インフラ事業、政策融資、そして国家レベルの戦略に統合することで、世界銀行グループは自然災害によって毎年発生する約9,000万人分の雇用損失を軽減するための取り組みを支援し、より強靭で競争力のある経済の実現に貢献します。

本プロジェクトは、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の資金提供を受けて実施されました。


Ming Zhang

World Bank Group Global Director, Urban, Subnational Finance, Tourism, and Disaster Management

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