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コミュニティのレジリエンス強化~中央アフリカ共和国を支える命綱

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コミュニティのレジリエンス強化~中央アフリカ共和国を支える命綱 中央アフリカ共和国バンギにあるコンゴ川最大の右岸支流、ウバンギ川 写真提供者:mtcurado.

2024年8月に中央アフリカ共和国(CAR)を襲った甚大な洪水により、数千もの世帯が一夜にして住まいを失いました。紛争と貧困に長年苦しむ同国では、自然災害がこうした課題をさらに深刻化させており、脆弱なコミュニティを取り巻くリスクは一段と高まっています。都市化の進行は現在の41%から2050年には60%へと上昇すると見込まれており、洪水や浸食といった災害から各都市を守る重要性はこれまでになく高まっています。

そこで立ち上げられたのが、7,000万ドル規模の「中央アフリカ共和国における包摂的で強靭な都市プロジェクト(PROVIR)」です。本プロジェクトは世界銀行の支援に加え、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の「日本-世界銀行防災共同プログラム」、City Climate Finance Gap Fund(通称ギャップファンド)気候リスク・早期警報システム(CREWS)イニシアティブといった主要なグローバルパートナーとの協力のもとに実施されており、首都バンギおよびベルベラティという最も脆弱な2都市を中心に、同国の都市レジリエンス強化を目指しています

強靭な都市づくりに向けて

PROVIRは、災害などのショックに強い基盤インフラの整備を通じて、約160万人に恩恵をもたらすことが期待されています。具体的には、排水システムの改善による洪水対策、高リスク地域における斜面安定化による浸食対策、そして、樹木の植栽や調整池などの自然を活用した解決策(NBS)の導入が予定されています。こうした取組みを通じて、洪水リスク軽減と地域経済の活性化の双方の実現を目指しています。

PROVIRの特筆すべき点は、都市部の洪水リスクおよび浸食リスクに対し、水と土壌を統合的に管理するアプローチを採用していることです。これまで別々に扱われることが多かったリスクを一体的に捉えるこうした実践は、この地域、とりわけ都市部では比較的新しいものです。

たとえば、中央アフリカ共和国では、雨水が適切に管理されずに流下することで地形が深く削られ、住宅やインフラが破壊される「ガリー侵食」が深刻な課題となっています。こうした課題に対処するため、GFDRRおよびギャップファンドの支援のもと、PROVIRは高度な洪水・浸食リスクモデルを活用し、NBSを優先的に検討しながら、効果的な対策の設計に取り組んでいます。

またPROVIRは、従来型のインフラに依存するだけでなく、緑を活用した代替的なアプローチも積極的に取り入れています。たとえば排水路や擁壁の整備では、成長に伴って強度が増す植物や樹木を用いることで、時間の経過とともに機能が高まる構造とすることができます。代表例が、生きた樹木や植物を組み合わせて造成するクライナー(Krainer)工法の擁壁です。植生が成長することで擁壁はより安定し、強靭な構造となります。こうしたアプローチは、環境保全に資するだけでなく、地域資源と労働力を活用することで社会経済的利益も生み出し、コスト効率・再現性・維持管理の面でも優れています。中央アフリカ共和国のような脆弱性・紛争・暴力(FCV)の影響下にある国では、土木工事を実施する企業の誘致や資材調達、労働力確保が難しいこともあり、特に有益な手法となっています。

最も脆弱な人々を支える

PROVIRの中心にあるのは「人」です。本プロジェクトは、中央アフリカ共和国の中でリスクに最もさらされている人々、すなわち女性や若者、2013~2015年の紛争によって国内避難民となり現在は都市部で生活している数千人を優先的に支援しています。こうした人々は安全が確保されていない地域に暮らし、保護インフラや社会サービスへのアクセスも限られていることが多く、自然災害による被害を受けやすい状況に置かれています。とりわけ女性は、質の高い住宅やサービスを確保することが難しいなどの理由から、災害の影響をより大きく受けやすいという特有の課題に直面しています。

PROVIRは、的を絞った重点的な投資を通じ、強靭なインフラ整備にとどまらず、地域住民の経済的自立につながる機会の創出にも取り組んでいます。例えば、洪水の多い地域では地域住民グループに対して園芸の研修を提供しており、環境保全とあわせて住民の生計向上にもつなげています。

脆弱国のためのモデルとして

PROVIRは中央アフリカ共和国に限られたプロジェクトではありません。他の脆弱国にとっても、絶えず変化する環境の複雑さに対応しながら、都市レジリエンスを高めていくためのモデルとなるものです。GFDRRの支援のもと、本プロジェクトではLiDAR(光による検知と測距)技術やドローン、洪水リスクモデルなどの最先端の分析手法が活用されています。これらの手法により、中央アフリカ共和国では精密な地形モデルの作成や、斜面安定性の評価が可能となり、これまでにない高精度での重点対策を立案できるようになりました。

GFDRRはまた、NBSの投資機会を特定する「NBS機会スキャン」を実施しており、そこでの結果は政府のPROVIR投資計画に組み込まれています。なお、世界銀行の調査によれば、NBSは災害リスクの軽減に加え、社会的・経済的便益を通じてFCV状況の緩和にも寄与し得ることが示されています。

都市設計にNBSを取り入れ、水と土壌の両面での管理を重視することは、この地域における災害リスク管理戦略において、きわめて重要な革新的取り組みです。中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国などでは、こうしたアプローチが先駆的に導入されており、中部アフリカ地域の各国の災害リスク管理の在り方にも影響を与えつつあります。こうした取り組みを進める中央アフリカ共和国は、高度な技術と持続可能な解決策を組み合わせることで、最も脆弱な状況においても気候変動や災害リスクに立ち向かいながら、レジリエンスと包摂性を高めていくことが可能であることを示す、象徴的な事例となっています。


Laurent Corroyer

Senior Disaster Risk Management Specialist

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