ブログチャンネル End Poverty in South Asia

機会均等ですべての女性に恩恵を

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Celebrating the women of South Asia

国連の「国際女性の日 」の今日、南アジア諸国におけるジェンダーの不平等がどれほどの弊害をもたらし、その解消のために何ができるかについて考えてみたい。

不平等がもたらす大きな弊害の一つとして、南アジア諸国が本来備えている力を最大限に発揮することができない点が挙げられる。例えばバングラデシュでは、 無報酬の仕事に就いている人は大半が女性であり、生産性の低いインフォーマル・セクター や貧困層でも女性の割合が多いのが実情である。女性の就業率を高めれば、2021年までに中所得国入りを果たすというバングラデシュの目標達成に大きく貢 献するだろう。それだけではなく、すでに中所得国である国 も、労働人口に占める女性の割合が増えればさらなる繁栄を期待できる。スリランカでは、就業人口に占める女性の割合が、何十年にもわたって、わずか34% にとどまっている。

女性の経済的機会が重要なのは、家計収入が増えるという意味からだけではない。 そうした機会を通じ、女性はより幅広く社会的な力を身につけ、それがひいては本人以外にもプラスの影響をもたらし得るからだ。例えば、 家計支出について女性の発言権が高まれば、子供のための支出拡大につながる可能性がある。ネパールやパキスタンなど様々な国で、教育や保健に恵まれた女性 の子供は、より充実した人生 を歩んでいることが多い。インドでは、現地政府のレベルで女性の権限を高めたところ、水や衛生などの公共サービス向上につながった。

不平等は、それがもたらす弊害が大きいだけでなく、その克服に向けた課題もまた極めて大きい。ジェンダーの不平等 は、機会や資源へのアクセスにおいて男性や男子を女性や女子よりも優遇するという、広範で根強い社会的通念の産物だ。

従って、ジェンダーの不平等を断ち切るには、持続的で総合的な取組みが求められる。具体的には、家庭、仕事や製品市場 、さらには公式・非公式の組織において、格差を助長する複合的な障壁の解消が必要となる。

第一歩として、女子の教育アクセスを改善することで、女子固有の不利益を軽減するとよいだろう。この点は南アジアで広く認識されており、インドの「女子教育」プロジェクト が教育における根本原因に取り組むなど、大きな進歩も見られる。 南アジアでは、初等教育における機会均等が達成されたが、中等教育における格差縮小のためになすべきことはまだ多い。 パキスタンとアフガニスタンでは依然として、中等教育就学率において域内で最大の男女格差が見られる。

次のステップとして、市場や制度面の不備によって、低賃金かつ極めて脆弱な雇用形態や自営業に女性が固定されている現実を是正することが挙げられる。

女性にふさわしく、かつ安全な仕事を数多く創出するよう奨励すれば大きな成果が期待できる。例えばバングラデシュでは、既製服業界において数多くの若い女 性の労働市場参入が実現したが、その結果、女子の結婚年齢が高くなり、出生率も低下したことが確認されている。さらに、ネパールでは、昨年の壊滅的な地震 で被害を受けた道路の修復・保守に、男性だけでなく、女性作業員も貢献した。排水溝の洗浄、道路にできた穴の修復、中小の障害物の除去、植林といった作業 は、安定収入をもたらしたばかりか、働く女性は家族やコミュニティから大切にされるようになった結果、意思決定に際しての発言権が高まった。

第三のステップは、南アジアにおける女性や女子に対する暴力への取組みだ。この問題については、パキスタン女性の殺人を取り上げたドキュメンタリー映画の女性監督シャルミーン・オベイド がアカデミー賞を受けたことで、世界的な注目を浴びたばかりだ。

女性や女子に対する暴力は、十分な教育や保健を受けられないことから、より高給な仕事のための通勤を躊躇することに至るまで、様々な悪影響を及ぼす。多く の国で進歩的な法律が採択されたが、施行されていない法律も多い上に、市民や法執行機関は大半がその点を認識していない。また、警察システムや司法システ ムにおける構造的欠陥から、女性は司法手続きに訴えることがかなわず、せっかくの法律も機能していない。

対策として、法体制や組織・制度、行政サービスの改善が挙げられる。具体的には、こうした暴力に苦しむ女性のために、性と生殖に関する健康の相談員を配置 するといいだろう。また、暴力の犠牲者を型どおりに扱うことがないようにするための警察官の啓蒙、被害女性のためのシェルター設置、ジェンダーに基づく暴 力の問題を専門とする裁判官の任命も考えられる。またこうした取組みを進めるためには、インフラ整備に投資して、都市に十分な照明を設置し、女性が安心し て公共交通機関を利用できる環境を作る必要がある。

どんな国であっても、国民の半数が100%経済に参加することができないようでは、経済的潜在力をフルに発揮し、広範な繁栄を実現することはできない。女性の日の今日、女性にも平等な機会や権利を認めることは万人にとっての利益となることを改めて訴えたい。

アネット・ディクソン
世界銀行南アジア総局担当副総裁


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