2024年12月17日 - 世界銀行の加盟国は今月、国際開発協会（IDA）の第21次増資として、過去最高となる1,000億ドルの資金パッケージに合意したと発表しました。 IDAは世界銀行の最貧国向け基金であり、78の低所得国に対し、多額の国際開発資金を提供しています。今回の増資は、10年間にわたり経済成長が停滞し、貧困が深刻化しているサブサハラ・アフリカ地域にとって大きな意味を持ちます。新報告書「競争条件の平準化：アフリカの貧困削減加速に向けた構造的格差の解消」は、貧困削減の阻害要因を分析し、早急に軌道修正するための方向性を示しています。
簡潔にまとめると、これまで大規模な貧困削減に至らなかった理由は、過去の経済成長があまりに小幅かつ不安定だったことに加え、富の分配にも大きな偏りがあったからです。アフリカ地域は現在、ラテンアメリカ地域に次いで世界で2番目に格差が大きく、1日2.15ドル未満で生活する世界の貧困層のうち60%がアフリカで暮らしています。報告書は、構造的な格差が様々な面で経済成長と貧困削減を妨げていると指摘しています。最貧困層の家庭に生まれた子どもは、所定の年数で学校を卒業する可能性が最も低く、保健医療、電力、衛生設備、デジタルサービスへのアクセスも最も限られています。また、そうした家庭では土地を所有していることも少ない上、生まれながらのこうした不利な状況は、特定の労働者や企業を優遇する法律や市場のひずみによって助長されます。税制や社会保障政策も、短期的には現金の乏しい貧困層の状況を悪化させる傾向にあります。
結局、構造的な格差が続くと、貧困層には不利な状況が続くため、どんなに努力してもその状況から脱け出せない傾向にあります。しかし、その状況は変えることが可能です。報告書は、貧困を削減し、経済的地位の向上というアフリカの家族や若者の夢を実現するための、4つの優先課題を示しています。
貧困削減の加速に向けた4つの優先課題
- 経済・制度面での強固な基盤の構築：各国は、マクロ経済と財政の安定を促進し、公正なルールを確立することによって、経済・制度面での強固な基盤を構築すべきである。競争上の障壁の撤廃、不当な特権の排除、財産権の保護が、生産的な企業、農業従事者、労働者の繁栄を可能にするための措置となる。
- 人的資本開発の機会拡大：質の高い教育や保健医療、基本的なインフラの提供拡充は、生産力の向上に極めて重要である。同様に、土地登記と財産権の強化、自然資本への投資の奨励、サービス提供の改善が、人々の潜在能力を最大限引き出すために役立つだろう。
- 人々に資する 市場機能の向上：各国政府は、市場機能の向上を図る必要がある。これによって企業、農業従事者、人々が自らの生産力をより有効活用し、すべての労働者の収入が拡大する。そのためには、資本と技術、国内市場と地域市場、そして世界貿易へのアクセス拡大が必要になり、道路やネット環境整備への投資、競争法の徹底、労働者の求職活動を支援するリソースの拡充、などが求められる。
- 公正かつ効率的な財政政策の導入：対象を絞らない補助金を廃止し、社会的セーフティーネットの強化と、財産税を含めた累進課税の推進によって、国は最も必要としている人々に確実に資金を配分することができる。
計画を実行に移す
上記4つの優先課題は開発を加速するための青写真であり、政治的な意思、政策改革の効果的な実施、場合によっては電力や教育へのアクセス拡大、多額の資金投資が求められます。増大する債務とその返済コストに取り組む地域では、税制と歳出政策における公平性と効率性の強化も最優先課題です。
アフリカでの過去の事例を見ると、改革によって一般の人々の機会が拡大するのであれば、変化に対する投資には意味があったことになります。成功例としては、エチオピアの土地所有権の拡大による農業への投資促進、ケニアのモバイルマネーによる金融包摂の促進、ガーナの初等教育への投資がもたらした修了率の向上や、カカオ部門の市場自由化やカカオの研究、疾病対策、与信プログラムへの投資による農業収入の増加などがあります。
この重要な局面において、IDAが提供するグローバルな知識や資金など、譲許的かつ実証済みの国際開発援助もまた、すべての人々に永続的な開発成果をもたらす新たな成長基盤への投資において不可欠です。世界銀行は、広範な経済ガバナンス改革の支援に加え、アフリカ開発銀行（AfDB）などのパートナーとの協力の下、2030年までにアフリカで3億人以上に電力アクセスを提供する地域的取組みの推進、学習貧困の撲滅、さらには、貧困家庭による栄養価の高い食品の確保、子どもたちの就学の徹底、生産力向上に向けた社会的保護プログラムの策定と資金調達の支援など、あらゆる段階における支援に取り組んでいきます。
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