ブログチャンネル Voices -ヴォイス-

IDAにとっては毎日が国際女性デー

Afghanistan-school-gender-girls
Basira Basiratkha, principal of the Female Experimental High School in Herat, Afghanistan. Her school benefited from an IDA-supported program. © Graham Crouch/World Bank

西尾昭彦 世界銀行開発金融総局担当副総裁

いかなる国、コミュニティ、経済であっても、全ての世代で男女が平等かつ制約なく社会・経済に参加できなければ、その潜在力を発揮したり、21世紀の課題に立ち向かうことはできない―世界銀行はこう確信しています。世界銀行グループの基金で最貧国を支援する国際開発協会(IDA) が支援する途上国においては、こうした事情は一層顕著です。

IDA対象国では近年、保健や教育といった分野を中心に男女間格差が順調に縮小してきました。  例えば、IDA対象国の女性の平均寿命は男性よりも長く(女性66歳、男性62歳)、教育分野では、初等学校の就学・修了、そして中等教育への進学において女子は男子に追いつく、又は追い越しました。

しかし多くの分野では、依然として根強い格差が残っており、IDAがジェンダーの問題に引き続き取り組むことは極めて重要です。IDA対象国は総じて、ジェンダー格差に関わる重要な分野で後れを取っており、女性が能力や潜在的経済力を発揮する妨げとなっています。
例えば:

  • 妊産婦死亡率は、多くの低所得国、及び脆弱性・紛争・暴力(FCV)の影響下にある国々において、引き続き極めて深刻な水準:サブサハラ・アフリカでは女性が出産関連の要因で死亡するリスクは36人に1人。
  • IDA対象国の女性は、男性と比べ、非正規部門の雇用、無給の家事労働、又は不安定な短期雇用に従事する傾向が大。
  • IDA対象国の女性・女子は、治安の悪さなどから、安くて質が高く信頼できる安全な移動手段を利用できず、そのためより良い経済機会へのアクセスが極めて限定的。
  • 途上国の女性の金融口座保有率は男性より9%ポイント低く、多くのIDA対象国で格差はさらに深刻。
  • IDA対象国の女性・女子は、自らの生活、家庭、コミュニティにおいて男性と同等の意思決定権を持てずにいる傾向が大。

低所得国は、全ての世代で男女間格差を縮小していく必要があります。縮小が進めば、経済の一層の多様化、質の高い仕事、そして次世代のための見通しが視野に入ってくるでしょう。  IDAは、これまで以上に野心的な取組みを通じて、各国で女性・女子への支援を進めていきます。

例えばネパールでは、質の高い雇用に対する支援として、 農村部輸送インフラ改善プロジェクトの下、脆弱層を中心とする貧困女性に雇用機会を提供しています。同プロジェクトでは、農村部の女性を対象に、仕事だけでなく、安全な労働環境を保証する施設・設備、月1回の無料の健康診断、銀行口座とデジタルバンキングの無料利用、スキル向上のための研修などがプロジェクトの一環として提供されています。その結果、250万労働日(有給)が創出され、女性労働者の70%以上が自らや家族のために収入を得て貯蓄ができるようになりました。

IDAはまた、水セクター等の公共サービスのガバナンスへの女性参加促進に一段と力を注いでいます。これは、IDA対象国ではいずれも、水セクターのガバナンスへの女性参加が低水準であるためです。そこで、マラウィ水・衛生プロジェクトでは、関連セクターの女性管理職の数を増やすため、制度強化の一環として女性を対象としたキャリア研修を実施しています。この手法は新たなスタンダードとして、今後のIDAプロジェクトに組み込まれる見込みです。

一方、女性自身が指導的役割を担いコミュニティが抱える問題の解決に積極的に参加することで、脆弱・紛争国においても、プラスの影響をもたらすことが可能です。研究によると、紛争解決に女性が参加した場合、和平合意はより長期にわたって継続し、より良い解決法が見出されることが明らかになっています。

さらに、ジェンダーに基づく暴力(GBV)といった深刻な問題への対処に、女性自身が中心的立場を担うことも必要です。  IDAは、女性支援とGBVへの対処を総合的な手法で進めるために、エビデンスに基づいた支援ポートフォリオの組成に取り組んでいます。例えば、「ナイジェリア女性プロジェクト」では、ターゲットを絞ったグループを設立することで、農村部や準都市部での女性ネットワークの構築、社会的支援へのアクセス提供、GBVリスクのモニタリングや対応、信頼構築に関する研修の実施、女性の起業家精神醸成や専門スキル獲得に不可欠なその他のスキル構築を図っています。

この他にもIDAは、データや知識分野における深刻なギャップの解消に取り組んでいます。ジェンダー格差に関する国レベルのデータは限定的であり、IDA対象国のデータが不足していることが、ジェンダー格差に対処するための適切な支援の策定を難しくしています。IDAは、より多くのデータ収集に加え、各国政府が雇用や資産保有といった主要分野における男女別データの統計をタイムリーに作成できるよう能力構築に向けて、多くの国々で取組みを進めています。

IDA対象国がジェンダーの平等で大きな進歩を果たさない限り、持続可能な開発目標(SDGs)は期限である2030年までに達成が望めません。 IDA、各パートナー、そして支援対象である国・コミュニティが一丸となって取り組むことにより、あらゆる年代の男女間格差を引き続き縮小し、すべての人々が機会を手にすることができるはずです。

このように、IDAにとっては毎日が国際女性デーなのです。


投稿者

西尾 昭彦

世界銀行 開発金融総局担当副総裁

コメントを投稿する

メールアドレスは公開されません
残り文字数: 1000