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隠れた雇用エンジン:サブサハラ・アフリカの農業の潜在性活用に向けて

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隠れた雇用エンジン:サブサハラ・アフリカの農業の潜在性活用に向けて ハロートラクターによる農場でのトラクターサービスとメンテナンス・トレーニング。写真:ハロートラクター

アフリカでは雇用創出について今もなお、ある根強い誤解があります。多くの人が、都市こそが経済的機会の中心になると考えています。しかし、サハラ以南アフリカの何百万人もの人々にとって、働きがいのある人間らしい仕事への道は、依然として農業に結びついています。若年層の失業率が上昇し、増加する労働力を都市部が吸収できない中、今も域内最大の就労人口を擁する農業を今まで以上に生産的かつ魅力的で革新的なセクターへと変革する必要があります。

統計でみる現状

都市の将来性が広く伝えられているにもかかわらず、域内農村部の雇用は70〜80%が依然として農業に結びついています(世界銀行、FAO)。今後10年間に3億6,200万人の若者が労働年齢に達する一方で、雇用機会は1億5,100万人分にとどまるとみられるため、対策を講じなければ、4分の1近くが仕事に就けないことになります。アフリカではナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、ウガンダの5カ国で、他のどの地域よりも多い3億400万人が、2050年までに新たに労働年齢に達する見通しです。この年齢層の急増と同時に、成長の鈍化、投資・貿易フローの落込み、債務負担、脆弱性増大も進んでいます。農業は雇用という意味で膨大な可能性を秘めていますが、生産性の停滞と雇用の質の低さが課題となっています。

農作業にとどまらない農業

農業は農作業にとどまりません。バリューチェーン全体にわたる物流、農作物加工、テクノロジー、サービスが含まれます。ラゴス、アクラ、アビジャン、ドゥアラなどの都市における食料需要の高まりは、川下のセグメント全体で雇用を生み出しています。

コートジボワールのカシューナッツセクターやナイジェリアのコメとキャッサバのバリューチェーンなどの例は、政策、インフラ、イノベーションへの調整された投資がいかに飛躍的成長を可能にするかを示しています。世界銀行は、アグリビジネスに100万ドルを投資すると、製造業やサービス業に同額を費やした場合よりも多くの雇用創出につながると分析しています。農業は、包摂的な成長のための眠れる巨人なのです。

阻害要因

農業はこのように有望である一方、その雇用創出の可能性はいくつかの障壁によって阻まれています。土地保有をめぐる不安定性は、若者への投資とイノベーションを抑制します。資金が乏しくトレーニングを受けていない若者は、デジタル農業、機械化、気候変動対応の実践における新たな機会から締め出されています。

バリューチェーンの分断とインフラストラクチャーの脆弱性は、規模の拡大と効率を損ないます。女性は、農業従事者に占める割合が大きいものの、男性以上に疎外されており、生産性の格差が拡大しています。さらに、多くの政策は依然として、持続可能な雇用エコシステムの構築に向けた長期戦略よりも、短期的な補助金の方を重視しています。

Image ケニアのムランガにある農園でUjuziデバイスを使って土壌肥沃度をチェックするブライアン・ボジア。写真:UjuziKilimo。


雇用を促進する5つの転換

農業を雇用の変革エンジンとして位置付けるには、5つの戦略的転換が必要です。

  • アグリフードのバリューチェーンへの投資:生産性パイプライン から雇用エコシステムへと視点を変え、さらに雇用に着目した投資を推進する。
  • 若者に焦点を当てた技能育成プログラムの規模拡大:デジタル、機械化、気候変動対応、サービス指向の技能を若者に習得させ、セクター内でイノベーションを促進する。
  • 農村インフラの強化:道路、エネルギー、貯蔵を改善してコストを削減し、市場アクセスを増やし、雇用を創出する成長を実現する。
  • 土地と金融システムの改革:起業家精神とイノベーションの基盤となる土地と信用の改革を通じて、若者と女性の参加を促進する。
  • 公共政策とドナー融資の連携:投資の意思決定において雇用集約性を優先し、アグリフードの仕事をより環境に優しく、競争力が高く、若者にとって魅力的なものにするイノベーションに補助金を配分する。

新たなグッドプラクティス

今後に期待を抱かせる頼もしい例があります。ガーナの国立起業イノベーションプログラム(NEIP)は、対象を絞ったプログラムを通じてアグリビジネスベンチャーを支援しています。ナイジェリアのアンカー借入者プログラムは、小規模農家を支援していますが、実施に伴い一貫した設計とフォローアップの必要性が浮き彫りになっています。国際金融公社(IFC)は、生産者と市場をつなぐために、アグリビジネスと食料回廊のイニシアティブに投資しています。

世界銀行グループはこうした取組みを拡大するため、アグリビジネスへの投資を2030年までに年間90億ドルへと倍増させる予定です。この「戦略的転換」は、食料生産を促進し、雇用を中心とする新興市場の差し迫った課題に対応することを目指しています。アプローチの中心となるのは、雇用創出、収益創出、食料・栄養改善に重要な役割を担う小規模農家と生産者組織です。

危機的状況にある世代

今後10年間に3億6,200万人の若者が労働年齢に達する一方、雇用機会は1億5,100万人分にとどまるとみられ、不足は深刻です。農業はもはや万一の際の頼みの綱とみなすべきではなく、経済変革の最前線です。

問われているのは、農業が雇用を創出できるかどうかではなく、政府、ドナー、投資家が、求められる緊急感と熱意を持って農業を支援するかどうかです。行動を起こさないでいると、この機会を逸し、世代全体を危険にさらすリスクがあります。

今こそ行動を起こすときです。農業は、伝統的に見過ごされてきましたが、サブサハラ・アフリカにおける持続可能な開発と包摂的な雇用創出の中心的な柱としての本来の役割へと引き上げる必要があります。


Ousmane Diagana

Vice President, Western and Central Africa

Chakib Jenane

Regional Practice Director for the Planet team, Western and Central Africa Region

Steven Were Omamo

Director of Development Strategies and Governance and Director for Africa, IFPRI

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