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日本と世界銀行の協働:強靭なインフラ構築に向けて

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インフラ整備について議論する際、近年重視されているのが「強靭性」です。気候変動や地質災害に直面し、各国政府はますますリスク管理を強化する必要性を認識するようになっています。  地域社会も同様に行動を起こし、公共セクターと共同で増大するリスクに対処することに関心を示しています。

世界銀行と日本政府は、質の高いインフラがこれらの取り組みの中心的役割を果たすと考えています。6月に東京で開催されたセミナーでは、これらの課題について両者が対面で話し合うことができ、コロナ関連の制限が何年も続いた後の貴重な機会となりました。世界銀行と日本政府は今後も、それぞれの専門性を活かした強固なパートナーシップを築いていきます。

なぜ強靭なインフラが重要なのか

日本は100年以上にわたる災害対策の経験から、災害リスク軽減や気候変動への適応の最前線に立っています。  日本の産業や人口の中心地は主に海岸近くに位置するため、台風や洪水、高潮、地震、津波などの災害リスクと複合的な気候変動に対する脅威にさらされています。

日本はこれらのリスクを真剣に受け止めています。歴史的に見ても、日本の財政資源の5%以上が災害リスク軽減に投資されてきました。日本では、国や地方レベルで、ガバナンスと技術が災害リスク軽減に組み込まれています。その結果、日本は地域社会と経済(特に農業、接続性、産業)において強靭性を構築し、経済損失を大幅に軽減しています。  2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030 」 は、リスク評価や事前のリスク軽減、より良い復興など、日本の経験を反映しています。日本の経験から得られた貴重な教訓は、災害リスクの高い他の国々に役立てられます。

世界銀行も、気候変動と災害リスクの課題に積極的に取り組んでいます。世界銀行が策定した「気候変動行動計画2021-2025」では、気候変動の緩和と適応への投資が、貧困削減と繁栄の共有のために中心的な役割を果たすことが明確に示されています。私たちはその考えを実践しています。2021年、世界銀行は融資全体の35%に相当する過去最多となる260億ドルを気候変動対策資金に充てました

質の高いインフラのための世界銀行と日本の連携

日本政府と世界銀行は、共通の関心と多大なインフラ投資ニーズに基づいて、途上国とともに、具体的かつ測定可能な方法でインフラ・プロジェクトの強靭性を高める取り組みを行っています。  このパートナーシップは、財政的責任やベストプラクティス、インフラサービスの消費者全員の福利を考慮し、官民のより良い協力関係を促進しています。

ここからは、世界銀行と日本政府が共同で取り組んでいるいくつかのプログラムを紹介します。

  • QIIパートナーシップは、途上国における持続可能で質の高いインフラ・プロジェクトのためのリソースを提供します。G20に承認された6つの基本原則に基づき、QIIパートナーシップはインフラ・プロジェクトが経済・社会・環境・開発への影響を最大化し、持続可能で強靭かつ包括的な成長に貢献するよう各国政府を支援します。
  • 日本は、世界銀行が運営するG20イニシアティブ「グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)」の創設メンバーです。プロジェクトの準備段階を支援するこのグローバルな協力プラットフォームは、途上国における持続可能で質の高いインフラ・プロジェクトへの民間投資の促進を図っています。
  • 日本―世界銀行防災共同プログラムは、100カ国以上で開発セクターにおける強靭性を高める取り組みを支援しています。このプログラムの実施機関である東京防災ハブは、日本の専門知識を世界各地に積極的に共有し、クライアント国のために役立てています。
  • 東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、世界銀行が融資する都市開発プロジェクトの効果を最大化するために、知見、見識、技術を普及しています。

また日本は、気候変動リスクに対して非常に脆弱な国々における世界銀行プログラムについても知見を有しています。例えば、フィリピンで学校や保健施設を強化する「地震リスクと強靭性プロジェクト」や「持続可能な包括的かつ強靭性のある観光プロジェクト」が挙げられます。

世界銀行と日本政府のパートナーシップは、インフラの長期的な持続に不可欠な財政的実行可能性、効率性、強靭性に重点を置いています。このアプローチは、今日建設したインフラが将来にわたってサービスを提供できるよう、適切な管理や運用を含めた資産のライフサイクル全体を考慮するものです。また、インフラには膨大な資金が必要なため、投資された1ドル、1円について、民間資本を最大限に活用し、最も高い効果を上げる必要があります。最後に、インフラの強靭性は、自然災害やパンデミックだけではなく、新たな常識となったサイバー攻撃やその脅威にも対応する必要があります。

生産的な解決策から得られるヒント

このパートナーシップにおいて、世界銀行と日本政府は世界中の成功例を参考にしています。バングラデシュでは、37年間にわたる持続的な投資と防災により、サイクロンによる被害が大幅に減少しました。モザンビークのベイラでは、自然を活用した対策として、川沿いに17ヘクタールの公園の整備を支援し、洪水の頻度と深刻さを軽減させました。シエラレオネのフリータウンでは、地滑りのリスクを最小限に抑えるため、25万本以上の木が植えられました。国際協力機構(JICA)が支援したマニラ首都圏の洪水管理マスタープランは、JICAと世界銀行による洪水管理投資の基礎となりました。ウズベキスタンのシルダリア地方では、同国政府が最近、国際コンソーシアムとのエネルギープロジェクトを商業的に完了しました。このコンソーシアムには日本企業であるデベロッパーの双日株式会社と電力会社のキューデン・インターナショナルが参加しています。GIFは国際金融公社(IFC)を通じて、このプロジェクトの初期段階から現在に至るまで支援を行っています。

これらのプロジェクトは、インフラを通じて強靭な成長を追求することで得られる成果を示しており、世界銀行と日本の協力関係のロードマップを提示しています。

このような状況を踏まえ、私たちは、公的資金を時の試練に耐えうる、強靭で環境に配慮したインフラ投資に利用し、公的資金を最大限に活用しなければなりません。また、質の高いインフラ整備に対する民間資本を促進するために公共支出が使われることも同様に重要です。

2022年6月22日、東京においてQIIパートナーシップ、GIF、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)、東京防災ハブ、TDLCが主催するラーニングイベントが開催されました。イベントの録画はこちら(YouTubeリンク)からご覧いただけます。

この記事の英語版(原文)はこちらから。 

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投稿者

Megumi Muto

Vice President of Development Finance, Partnership, and Mobilization at the Japan International Cooperation Agency (JICA)

Sameh Wahba

Regional Director, Sustainable Development, Europe and Central Asia, The World Bank

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