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ワクチンの公平な供給と感染症終結に向けた新コミットメント

??????????????????????????????????????????????????????????? ???Shutterstock 写真キャプション:アストラゼネカ社製の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種に当たる医療従事者(インドのムンバイにて) 撮影:Shutterstock

来週、英国で開催されるG7サミット(主要7カ国首脳会議)の準備が進む中、最も重要な議題は、いかにして新型コロナウイルス感染症の世界的流行を終息させ、世界規模の回復を実現できるかである。  この大きな課題を前に我々に猶予はない。   

今回の公衆衛生上の危機の終息なくして広範な回復があり得ないことはもはや極めて明白である。そのための鍵を握るのがワクチンの普及である。

ワクチン開発の最前線ではめざましい進歩がみられる。世界の科学者が総力を挙げた結果、かつてないペースで複数のワクチンが開発された。ワクチンの研究、開発、生産を加速させるため、公官民両セクターから過去に例のない規模の資金が投入された。だが、富裕国と貧困国の間には危険なまでに根深い格差がみられる。  

事実、富裕国の一部では、国民へのブースター(追加免疫)ワクチンの接種について議論が既に始まっているが、途上国では、最前線で働く医療従事者も含め、ほとんどの人がまだ1回目の接種も受けていない。最も遅れているのは低所得国で、ワクチンを受けた人は1%にも満たない。 

富裕国でワクチンが普及し、貧困国が取り残されるという二極化が加速 

ワクチンの不公平な供給は、膨大な数の人々を感染の危険にさらすだけではない。致死性の高い変異株の発生と、その世界的な広がりを許すことになる。変異株の蔓延が続く中、高度なワクチン接種プログラムの整った国であっても、厳しい公衆衛生対策の再導入を余儀なくされており、中には移動制限を課した国もある。このように、今回の危機は経済格差を広げ、すべての人にマイナスの影響を及ぼしている。   

他の展開も可能なはずだ。だからこそ 我々は今、国際社会にかつてないレベルの支援と行動を呼びかけたい。新たな資金援助に裏打ちされ強化された協調的戦略により、世界中にワクチンを行き渡らせることが目標だ。 

国際通貨基金(IMF)職員によりこのほど、明確な目標と現実的な行動、そして実現可能な費用による計画が提案された。世界保健機関(WHO)とパートナーが、グローバルな対応加速のための枠組みACTアクセラレーター・イニシアティブと、ワクチン分配のための国際的枠組みCOVAXの下で、また世界銀行グループ、世界貿易機関(WTO)など多くの機関が取組みを進めているが、この計画はそれらを強化・支援するものだ。  

推定500億ドルの費用をかけることで、途上国での感染症流行のより早期の終息、感染や人的被害の緩和、経済回復の加速に加え、2025年までに世界全体で約9兆ドルの経済効果が見込まれる。それはすべての人にとって望ましい展開だ。経済効果の約60%は新興国・途上国、残り40%は先進国で見込まれている。しかも、これに加えて、人々の健康と命という意味でも計り知れない利益を期待できるのだ。  

そのためには何が必要か。  

第一に、より多くの人に早くワクチン接種をするという目標をより意欲的なものとする必要がある。 WHOとCOVAXパートナーは、2021年末までにすべての国で少なくとも人口の30%にワクチン接種を完了するという目標を設定している。  だが、ほかの合意や投資拡大を通じてこれを40%に、そして2022年前半には少なくとも60%にすることも可能だ。

そのためには、低・中所得国向けに、グラントや譲許的融資を中心とする追加資金が必要となる。より多くの人への迅速な接種のためには、COVAXなどを通じ、各国の接種計画と調和した形で、途上国にワクチンをただちに寄付する必要がある。国境を越えた自由な物流を確保し、ワクチンとその原料の供給を加速させるために、貿易分野での協力も欠かせない。   

第二に、追加免疫ワクチンの接種を必要とする新たな変異株といった望ましくない事態発生のリスクに備える必要がある。具体的には、少なくとも10億回分の追加ワクチンのために生産量向上に向けた投資、現在生産能力の乏しい地域への生産拠点拡大、技術やノウハウの共有、ゲノムやサプライチェーンの監視拡大、そしてウイルスの突然変異や供給ショックといった緊急時の対応策が求められる。   

供給拡大を妨げる要素は、すべて解消する必要がある。そのためWTO加盟国には、知的財産をめぐる現実的なソリューションに向けた協議を加速するよう呼びかけたい。多くの低・中所得国では、国内の生産設備への投資に向けた動きも始まっている。国内生産は、今回の流行を終わらせるだけでなく、次に備えるという意味でも重要だ。 

第三に、ワクチン配布とACTアクセラレーター・イニシアティブを強化しつつ、感染の検査・追跡、医療用酸素の安定供給、治療と公衆衛生対策をただちに推進する必要がある。WHO、ユニセフ、世界銀行、Gaviは、140超の途上国でワクチン準備状況の評価を実施し、ワクチン配給への準備を整えるため現地で支援や資金を提供している。    

コストはどうなるのか。  

500億ドルのうち少なくとも350億ドルをグラントで提供すべきことには明確な根拠がある。主要20カ国(G20)は、2021年にACTアクセラレーターへ約220億ドルの追加資金を提供することの重要性を認識しており、前向きな姿勢を示している。  

2022年にワクチン供給を強化し、検査や治療、監視を一段と強化するにはほかにも約130億ドルの資金が必要となる。資金計画全体の内、残りの約150億ドルは、世界銀行によるワクチン接種のための120億ドルの資金ファシリティ等、国際開発金融機関の支援の下、各国政府による負担が必要になるかもしれない。

この計画を成功させるには、さらに2つの要素が求められる。スピードと協調だ。

公約を打ち出したまま実現に時間がかかるような事態は避けなければならない。この計画に必要なのは、資金調達、ワクチン寄付、予防的な投資や計画をいずれも先行して実施することである。これら全てを可能な限り早く実現することが不可欠だ。  

その上で、調達・配送プロセスの完全な透明化を前提とする、世界規模での協調した行動が必要だ。戦略の成否は、公的機関、民間企業、国際金融機関、財団など、全ての関係機関による協調的行動にかかっている。  

今回の感染症流行への500億ドルの投資は、我々の生涯において公的資金の使い道として最も適切なものとなる可能性がある。  この投資は、計り知れない開発成果をもたらし、世界規模での成長を促進し人々の幸福と健康を高めることになるはずだ。しかし、絶好の機会は瞬く間に失われる。躊躇すればするほど、人々の苦しみや経済的損失は大きくなるばかりだ。   

我々はここに、4つの機関を代表して、共に取り組んでいく新たなコミットメントを発表する。必要な資金の拡大、生産の増強、ワクチンと原材料の国境を越えた円滑な流通を通じ 、公衆衛生上の対策と経済の回復を支援し、切実に必要とされている希望をもたらすために、ワクチンの供給を大幅に増やしていく。 

我々4機関は、希望を現実のものとするため、取組みをさらに強化していく。  

IMFは、加盟国の準備金と流動性を高めるため、過去最大規模の特別引出権(SDR)の配分に向け準備を進めている。WHOは「戦略的準備対応計画」と「ACTアクセラレーター」パートナーシップの喫緊のニーズを満たすための資金調達を模索し、新型コロナウイルス感染症技術アクセスプール(C-TAP)はノウハウや技術の共有を奨励している。世界銀行は今年半ばまでに少なくとも50カ国でワクチン・プロジェクトを立ち上げ稼働させる予定で、国際金融公社(IFC)が途上国向けのワクチン供給加速に向けて民間セクターの動員を図っている。また、WTOは計画成功に向けて、サプライチェーンの障壁撤廃に取り組んでいる。  

我々は取組みを強化すると共に、この野心的な計画に対しG7各国から資金提供、ワクチンの寄付、世界各地での生産拡大に向けた技術的ノウハウの共有を通じ、全面的な支援を期待している。 

今回の感染症危機の終息は解決可能であり、今こそグローバルな行動が求められている。 

終結に向け、一丸となって取り組もうではありませんか。 

この論説はThe TelegraphWashington PostThe Times of IndiaAllAfricaAsharq Al-AwsatEl PaisO EstadãoLa RepubblicaDer SpiegelToronto StarZum朝日新聞に掲載されたものです。

 

関連項目

世界銀行グループの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策への支援

新型コロナウイルス感染症ワクチンへの国別アクセスに対する世界銀行の支援(英語)


投稿者

Kristalina Georgieva

Managing Director, International Monetary Fund (IMF)

デイビッド・ マルパス

世界銀行グループ第13代総裁(2019年4月9日~2023年6月1日)

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