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西部・中央アフリカ地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの重要性

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西部・中央アフリカ地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの重要性 Isatu Bah vaccinates her 5-week-old son, Mohamed Kamara, at the Ola During Children's Hospital in Freetown, Sierra Leone. Photo credit: Dominic Chavez/World Bank

今週、アフリカ各国政府、民間セクター、市民社会、国際開発パートナーのリーダーが一堂に会して開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD)で、保健が重要なアジェンダとなっていることは心強いことです。 

これは、すべての人々が経済的困難に陥ることなく質の高い保健と栄養サービスにアクセスできるべきであるとするユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)が人類にとって極めて重要であることを反映しています。UHCとは、妊婦が医療施設で安全に出産できること、子どもが予防可能な病気で命を落とさないこと、労働者が仕事で生産性を維持できること、そして、いかなる家族も命を救うための薬と食料のどちらを購入するかの選択を迫られないことを意味します。 

次世代を支える保健と栄養への投資

西部・中央アフリカ地域は、世界で最も若く、最も急速に人口が増加している地域の1つです。現在の人口は5億3,400万人ですが、さらに今後25年間で2億人以上の子どもが生まれる見通しです。2050年には、世界の若者のほぼ5人に1人が西部・中央アフリカ地域に暮らすようになります。彼ら若者は、アフリカ経済の未来を牽引する大きな可能性を秘めています。しかし、この可能性を実現するためには、人生の初期段階から健康と栄養への持続的な投資が不可欠です。これらは、より良い学習、スキル開発、生産性向上の基盤となるからです。

保健は、現在だけでなく将来において雇用を創出し、維持するためにも極めて重要です。質の高い保健システムへのユニバーサル・アクセスは、雇用機会を創出し、生産性を向上させます。西部・中央アフリカ地域では、新たに140万人の熟練した医療従事者の雇用が生まれ、新たに80万人の地域医療従事者が雇用される可能性があります。さらに、アフリカでの医薬品をはじめとする医療製品の製造を拡大することにより、雇用創出の促進、スキル開発の強化、頭脳流出の逆転に役立つでしょう。健康な労働者は、労働生産性の向上にもつながります。ガーナでの調査によると、労働日数の損失のほぼ40%がマラリアによるものでした。

強靱な保健システムの重要性 

保健について語る際には、強靱性への対応も不可欠です。命を救い、開発成果を守り、制度に対する国民の信頼を維持するためには強靭性が不可欠だからです。コロナ危機やエボラ出血熱など最近発生した公衆衛生上の緊急事態は、危機を予防、検知、効果的に対応しながらも、日常的なケアを提供できる保健システムが緊急に必要とされていることを浮き彫りにしました。 

過去10年間、私は、強靱性の強化、保健と栄養の成果向上に対する各国の強いコミットメントを目の当たりにしてきました。ナイジェリアは、保健サービスの質を高め適用範囲を拡大するため、プライマリヘルスケアに投資し、セクター横断的な協力を促進しています。コートジボワールは、国民健康保険プログラムの規模を拡大し、官民パートナーシップにより検査室と画像診断能力を高めています。ガーナは、国民健康保険制度と総合的な医療提供を通じて医療財政改革を推進しています。一方、中央アフリカ共和国、ブルキナファソ、マリ、モーリタニアは、保健分野の成果を改善するために、成果を支払いの条件とする成果連動型の資金調達方法を用いています。マダガスカルやセネガルといった国々は、アフリカ全土における子どもの栄養不良削減の傑出したリーダーとして、他の国々に貴重な教訓を提供しています。 

とはいえ、まだ重大な課題が残っています。あまりにも多くの人が依然として質の高い基礎的保健サービスにアクセスできない中、この地域ではパンデミック、気候ショック、食料・栄養不安、紛争によるリスクが高まっています。政府による保健支出は他の地域と比べて低く、年間国家予算の15%以上を保健分野に充てるとしたアブジャ宣言の目標に遠く及びません。同時に、パートナーによる優先順位の変更に伴い保健分野への開発援助は減少しており、国内資金の動員と、既存資金のより効率的な活用がこれまでにも増して急務となっています。 

質の高い保健サービス向上のためのパートナーシップ

こうした課題を受け、世界銀行は、2030年までに西部・中央アフリカ地域の2億人を含む世界全体で15億人に質が高く手頃な価格の保健・栄養サービスを提供できるよう支援を行うと表明しています。また、日本政府や世界保健機関(WHO)と連携し、世界各国による国民保健コンパクトの策定を支援しています。コンパクトには、UHC達成に向けた各国のビジョン、優先的改革、資金ニーズの概要が盛り込まれます。

2025年6月、世界銀行は次の3つの優先事項に着目した新しい地域保健戦略を策定しました。

最前線を最優先:プライマリケア・レベルとコミュニティ・レベルで質の高い保健・栄養サービスのパッケージを提供する。

財政の改善:保健支出を見直して増額する。

将来のために:脆弱性に耐え得る強靱な保健システムを構築する。世界銀行グループはまた、アフリカにおける医療用品メーカーの拡大を支援するため準備を進めています。

日本政府とのパートナーシップは特に大きなインパクトをもたらしています。UHCにおける日本のリーダーシップは、資金の動員、知識の構築、連帯の促進に役立っています。世界銀行とWHOの連携により発足する日本UHCナレッジハブは、アフリカを重点課題と位置づけ、世界各国の保健・金融当局間の知識共有とキャパシティビルディングのための貴重なプラットフォームとなっています。

西部・中央アフリカ地域でUHCを達成するまでには時間がかかるでしょう。しかし、政治的な意志、賢明な資金調達、イノベーション、そして揺るぎないコミットメントがあれば、達成は可能です。世界銀行は、この取組みにおける信頼できるパートナーであり続け、世界中のすべての人が健康で尊厳のある生活を送る権利があると確信しています。


Ousmane Diagana

Vice President, Western and Central Africa

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