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5つの図表で読み解く世界経済の見通し

5つの図表で読み解く世界経済の見通し 新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、ヘルメットとマスクを着用して業務に当たる建築用工具の営業担当者 © Daniel Catrihual/Shutterstock

世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による急激な落ち込みから徐々に回復するとみられる。2021年は4%の経済成長が見込まれるが、それでも危機以前の予測をなおも5%以上下回る水準となる。今回の危機により、今後の成長の可能性が、長期間にわたり損なわれた可能性が高い。特に、投資と人的資本への打撃により、新興国・途上国(EMDEs)の成長の可能性が低下し、主要な開発目標達成への歩みを後退させている。感染拡大の再発により中期的には困難となった世界規模の回復も、ワクチンの開発・普及が進み感染が抑制されるのに伴い、信認、消費、貿易が徐々に改善し、進展していくと見込まれる。

1. 感染の再拡大により回復のペースが鈍化

新型コロナウイルス感染症の流行は依然として世界中で拡大している。一部の地域では爆発的な感染拡大が見られ、1日の新規感染者数はなおも高い水準にある。その結果、始まったばかりの世界的な経済活動の回復は減速を余儀なくされた。とは言え、有効性の高いワクチンの開発には大きな進展がみられる。

2. 2021年の成長には異なるいくつものシナリオ

先進国の経済規模縮小が予想を下回り、中国の景気回復が予想以上に上向きであったことで、2020年の世界全体の景気後退は、当初の見通しよりも幾分小幅にとどまった。一方で、中国を除く新興国・途上国の大半では、予想より深刻な景気後退がみられた。世界経済の先行きは不透明であり、成長にはいくつかの展開が考えられる。

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3. 感染症流行による打撃の長期化

世界GDPは2022年にも依然として危機以前の予測を4.4%下回ったままで、しかも新興国・途上国では先進国と比べ、当初の予測との開きが2倍近くになるとみられる。労働生産性を生み出す物的資本と人的資本の蓄積減少の影響により、回復が抑え込まれるとみられる。

4. 財政支援の縮小

新型コロナウイルス感染症の世界的流行による経済への打撃を緩和するに当たり、財政支援は重要な役割を果たした。危機の収束に伴い、政策担当者は、拡大を続ける膨大な債務負担のリスクと、早すぎる時期の金融引き締めにより景気低迷を招くリスクとの間でバランスをとる必要がある。大半の国では、昨年提供された財政支援の多くが期待できなくなることが成長の足かせになるとみられる。赤字は概ね縮小する見込みとは言え、債務増大につながり、特に、借入金が効率的に活用されていない場合には、将来的な問題の誘因となることも考えられる。

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5. 構造改革により、危機の長期的打撃の緩和が可能

回復に時間を要することは、必然ではなく、生産性を高める構造改革を通じて回避することも可能だ。教育、効果的な公共投資、セクター間での再配分、ガバナンスの改善を促進することにより、今回の危機による深刻な悪影響を埋め合わせ、より大幅な長期的成長への土台を築くことができる。グリーン・インフラ・プロジェクトへの投資は、持続可能な長期的成長への一層の支援となると共に、気候変動の緩和にも貢献する可能性がある。

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関連項目

プレスリリース: 世界経済の成長率、2021年は4%に:回復の持続にはワクチン展開と投資が鍵

報告書ウェブサイト: 世界経済見通し


投稿者

Patrick Kirby

Senior Economist, Office of the Chief Economist for South Asia

Collette Wheeler

Senior Economist, Prospects Group, World Bank

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