本ブログは、毎年12月3日の国際障がい者デーを記念し、執筆されています。
インクルーシブなインフラへの投資は、経済開発において緊急に取り組むべき課題です。 世界では、推定6人に1人(13億人)が重大な障がいを有しており、その80%が発展途上国に住んでいるため、計画、資金調達、建設の段階で都市中心部へのアクセスをより向上させる方法を検討することが不可欠です。
障がい者のインクルージョンに関しては、かつては慈善的な取り組みと見なされていたものが、開発の課題としての認識へと進展してきました。現在、障がい者団体が主導のもと、オーストラリア、カナダ、日本、ノルウェー、英国、米国、そして世界銀行やアジア開発銀行などの機関が支援をおこなっています。また、国連も国連障がい者権利条約(UNCRPD)や、都市をよりインクルーシブで安全かつ持続可能なものにするSDGs11「住み続けられるまちづくりを」を含む持続可能な開発目標(SDGs)などを通じ、障がい者の権利とインクルージョンを推進する上で重要な役割を果たしています。
日本はどのようにインクルーシブな都市インフラを推進してきたか
日本の都市は、建造環境や公共サービスの面で、世界で最も利用しやすい都市の一つとして知られています。第二次世界大戦後に始まった段階的な都市化のアプローチの結果、現在の経済成長や持続可能な生活を優先する事業モデルを生み出しました。特に、当該モデルは富山市に顕著です。富山市の都市計画担当者は、都市の経済効率性を維持するためには、都市計画や交通計画への統合的なアプローチが不可欠であり、インフラのライフサイクルコスト(必要な経費の総費用)を考慮する必要があるとの認識を有しています。
また、国際協力機構(JICA)が主導するインクルーシブ・インフラへの日本のコミットメントは、ジェンダー平等や障がい者のインクルージョンにも及んでいます。 . JICAは質の高いインフラ整備を推進し、インフラ・プロジェクトの各段階における包括的なガイドライン「障害と開発の課題別指針」やJICAグローバルアジェンダ「社会保障・障がいと開発」を策定してきました。JICAのアプローチは、社会保障チームによる詳細な計画・実施・モニタリング・評価のもと、各プロジェクトがインクルージョンに向けて綿密に検討されることを保証しています。
例えば、JICA支援によるバングラデシュ初の都市高速鉄道(メトロ)であるダッカメトロ6号線プロジェクトの地下鉄車両では、車椅子利用者向けの専用エリアの設置に加え、同国初となるメトロ女性運転士を採用しています。インフラがいかに機能的にインクルーシブな環境をもたらすことができるか、JICAの原則を機能的に実践した好例でしょう。
インクルーシブなインフラ整備に向けた協力
インクルーシブなインフラ整備に向けた重要性が認識されつつあるとはいえ、ユニバーサル・デザインとしても知られるインクルーシブ・インフラの導入に課題がないわけではありません。例えば、政策や規制の壁、資金調達の制約、インクルーシブ・デザインの専門知識の必要性などが課題として挙げられます。インクルーシブ・インフラの課題を克服するためには、政府、民間セクター、市民社会、国際機関、アドボカシー組織との連携が必要となります。
世界銀行は、障がい者のインクルージョンを強化するために、技術支援、ナレッジリーダーシップ(知識の共有)、パートナーシップ構築の3つの戦略を採用しており、日本は重要なパートナーとして位置づけられています。
例えば、日本政府と世界銀行が主導する「質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップ」と「東京開発ラーニングセンター(TDLC)」により、ユニバーサルデザインへの融資の重要性について日本の専門知識や経験を共有することを目的とした公開セミナーが東京で開催されました。
また、世界銀行が支援をおこなうモザンビークのマプトにおける都市モビリティプロジェクトでは、QIIパートナーシップが推進するQII原則のうち、「インフラ投資における社会的配慮の統合」(原則5)を含んでいます。QII原則は、各国政府を支援し、インフラ・プロジェクトを持続可能で強靭、且つ包括的な成長に貢献することを目指しています。 こうしたQII原則のもと、 世界銀行が支援したマプト初のバス高速輸送システムの開発では、ビッグデータを活用して所得層別の移動パターンをマッピングすることで、低所得者層でも利用しやすく、民間セクターの参加を最大限に活用できるような設計がおこなわれました。その結果、マプトに包括的で持続可能な都市交通ソリューションをもたらしました。
加えて、日本と世界銀行は、グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)を通じて、インフラ開発でも協力しています。
私たちは、障がい者を含むすべての人が活躍できるインフラ環境を作るためには、より一層インクルージョンへのさらなる投資と連携した取組みが求められていくでしょう。
※執筆者が登壇した2023年10月16日に東京で開催された、東京開発ラーニングセンターとQIIパートナーシップ主催の、ユニバーサルデザインへの融資の重要性に特化したナレッジイベント開催の模様はこちらからご覧いただけます。
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