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廃棄物管理の新しい取組み:いかに廃棄物を削減しながら経済成長を実現するか

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Recycling bins on the campus of Waseda University in Tokyo, Japan (Photo by elmimmo via Flickr CC) Recycling bins on the campus of Waseda University in Tokyo, Japan (Photo by elmimmo via Flickr CC)

私たちは、廃棄物に「覆われる」危機に直面しています。 

世界銀行の報告書「What a Waste 2.0」 によると、廃棄物の発生は2050年までに70%増加すると予測されていますが、これは世界の人口増加率の約2倍にあたります。一人当たりの廃棄物の量は確実に増え続けており、その主な要因は急速な都市化と経済成長です。都市は、増え続ける大量の廃棄物を管理するために緊急に対応する必要があるのです。

開発途上国の政府は、地方自治体予算の20%を廃棄物管理に費やしていますが、驚くべきことに、廃棄物の93%がオープンダンプ(集積投棄)または焼却されているのが現状です。

同報告書によると、都市化と経済成長により廃棄物の発生がサブサハラアフリカで2倍、南アジアで3倍になる と推定されています。この地域は廃棄物の69%と75%をそれぞれオープンダンプし、焼却しているため、廃棄物問題は急速に悪化します。

私たちが今何らかの行動も取らなかったならば、環境への影響を食い止めるためのコストは膨大なものになります。廃棄物を適切に管理することは経済面でも望ましいことです。 東南アジアに焦点を当てた研究によると、燃やされたり、投棄されたり、水路に排出された未収集の家庭ごみの経済的コストは1トン当たり375ドルです。一方、同地域において、国際衛生基準を満たす総合的な廃棄物管理のコストは1トンあたり50〜100ドルだと指摘されています。未収集の廃棄物の経済的コストは、廃棄物を適切に管理・処理するコストの5倍にもなるのです。

増え続ける廃棄物の状況が悪化しているなかで、特にプラスチックは危機をさらに悪化させます。 2016年だけでも、世界では約2億4,000万トンのプラスチック廃棄物が発生しました。これは、500ミリリットルで10グラムのペットボトル約24兆本分に相当します。これは、50mプール480万個分の水量にあたります。視覚化は困難ですが、膨大な量のプラスチックです。

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世界中の廃棄物の不適切な管理により、プラスチックが環境に不可逆的に影響を与えていることがますます明らかになっています。 海洋は、プラスチックが生態系と相互作用し、酸素を減らし、温室効果ガスを生成し、野生生物に直接かつ致命的な影響を与えて劣化しています。そして、プラスチックは私たちの食物に浸透しています。ある研究では、北西大西洋の深海233種の魚の73%がプラスチック粒子を摂取していたことがわかりました。別の研究では、アマゾン川の支流などの淡水種の80%がマイクロプラスチックやナノプラスチックを摂取していることがわかりました。これは、健康と生産性に大きな悪影響を与えると予想されます。加えて、生まれたばかりの魚はごみを食べ物と間違えています。彼らが死ぬと、大きな魚が少なくなり、食物連鎖に悪影響を与える可能性があります。

しかし、まだ希望はあります―経済成長は常に廃棄物の発生と連動する必要はありません。廃棄物の発生を経済成長から切り離すことは起こり得るのです! 

日本は経済成長と廃棄物発生の切り離し対策の最前線にいます。日本は、経済成長を成し遂げながらも廃棄物を削減しました。 平均して、高所得国は1人あたり1.6 kgの廃棄物を生産し、観光に依存する小さな島国では1人あたり最大4.5 kgを生成します。しかし、日本では2000年の1日1人あたり1.2 kg近くでピークに達した後、現在の1人あたりの廃棄物生産量は、0.95 kgに減少しています。 

Realizing economic growth while cutting waste

日本では、北九州市が廃棄物削減の最も好例として際立っており、1人あたりわずか0.42 kgの廃棄物しか生産されていません。 これは、世界平均の0.75 kgの半分ほどであり、サブサハラアフリカの地域平均0.46 kgを下回っています。これは、一人当たりの最低発生地域(そして同時に最貧地域)です。

高所得都市である北九州市は、実際にどのようにして廃棄物を削減したのでしょうか?その経験から何を学ぶことができたのでしょうか? 

北九州市は、公害が深刻な工業都市として、処分中心のアプローチではなく、環境に優しいアプローチを優先しました。効率的な廃棄物管理システムの主な要素は、廃棄物の発生源での分別、家庭レベルでの堆肥化、リサイクル、市民への積極的な関与といった始点から終点までのすべてのプロセスを網羅しています。

これらのアプローチは、家庭ごとの定額料金ではなく、量による廃棄物使用料の支払いという廃棄物を削減するための経済的インセンティブがあります。時を経て、北九州市では、環境への意識を高め、自動車や家電製品といった多くの種類の廃棄物から材料を回収するために、エコタウンを構築しました。

北九州市と日本の事例は、廃棄物の効果的な削減と管理に向けて取り組んでいる世界各国に関連があります。北九州市では、市民の意識と参加率が大きな影響をもたらしました。家計レベルと政府のコミットメント、およびインセンティブの提供により、廃棄物管理部門の変革が可能になり、最終的に環境・経済、および都市の状況が改善されました。しかし、このような文化や考え方を変えることは簡単ではありません。信頼を築くには、時間・コミットメント・信頼関係が必要です。

世界的に方針を変えることにより、都市や海洋に廃棄物が蓄積することを防ぐことができます。日本の都市、特に北九州市の事例から学ぶことによって、開発途上国を含む世界中の多くの都市を助け、廃棄物の発生を減らし、都市と市民の持続可能な未来を達成することができます。

北九州市やその他の日本の都市のように、廃棄物の発生と経済成長の分離を実現できます。  私たちは、環境、海洋、そして自らの健康のために、廃棄物の発生と経済成長の分離を実現しなければなりません!

 

国際シンポジウム:海洋ごみと海洋プラスチック問題解決に向けた課題とアプローチ ― 2019年11月13日 北九州にて開催

報告書:What a Waste 2.0 ― 2050年に向けた世界の廃棄物管理の現状と展望(英語)

 

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投稿者

Sameh Wahba

Regional Director, Sustainable Development, Europe and Central Asia, The World Bank

Silpa Kaza

Urban Development Specialist, World Bank

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