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コミュニティの強靭性を高めるための「レシピ」

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?????????????????????????????????????????????Emi Kiyota? 東日本大震災後の復興過程において、地域コミュニティの拠点で料理をする地元の女性たち(写真:Emi Kiyota)

迫田恵子  防災専門官
Bandita Sijapati 上級社会開発専門官

何がコミュニティの強靭性を高めるのでしょうか?

料理、とクックパッド株式会社でブランディング担当本部長を務める小竹貴子さんはいいます。東京に本拠地を置くクックパッドは、オンラインの料理レシピ検索・投稿プラットフォームを提供し、世界中で1億人以上のユーザーに利用されています。

そのクックパッドが、特別なレシピ本を9月1日に発売。この日は防災の日 ― 日本で観測史上最大規模の死傷者を記録した関東大震災が1923年に発生した日でした。

このレシピ本には、限られた道具を使い、ありあわせの材料で食事を作るアイデアが盛り込まれています。被災時に、限られた水と電気やガスで 家族の食事を準備しなければならなかったクックパッドのユーザーの知恵が詰まった本です。料理という基本的な行いが、人々が災害時に生き残る上で役に立つのならば、コミュニティ全体の強靭性を維持させることができる国の政策には、どんなレシピ(手段)があるでしょうか。

スリランカで実施されている「レシピ」とは?

2004年にスマトラ沖地震による大津波がこの島国を襲ったことをきっかけに、スリランカは気候変動の影響や自然災害の脅威から国民やインフラを守り備えるためのレシピ(手段)を幾つか実施してきました。 

国の災害能力を高めるため、2005年の災害管理法(Disaster Management Act 2005)の整備や包括的災害管理プログラム(Comprehensive Disaster Management Programme 2014)を実施するなど、具体的な取り組みを通じて、法的枠組みや政策の基盤を構築してきました。     

こうした防災に関する取組の程度に関わらず、地震や洪水などの自然災害は誰にでも影響を及ぼします。しかし、その影響の程度は異なる社会・経済状況により異なります。そして他の国と同様にスリランカでも、自然災害による打撃を最も深刻に受けるのは貧困層の人々です。 

こうした防災に関する取組の程度に関わらず、地震や洪水などの自然災害は誰にでも影響を及ぼします。しかし、その影響の程度は異なる社会・経済状況により異なります。そして他の国と同様にスリランカでも、自然災害による打撃を最も深刻に受けるのは貧困層の人々です。

このような状況を受け、洪水リスクから国民と資産を守るため、スリランカ政府は、世界銀行の支援を受け、新しいプログラムを立ち上げたばかりです。このプログラムでは、早期警戒システムの改善および、洪水対策インフラの導入が行われます。 

このプログラムでは、特に災害の被害を受けやすい社会・経済的グループの人々を考慮し、包括的な強靭性強化に向けて以下の3つのレシピを先駆的に実施しようとしています。

1つ目は、早期警戒システムを、様々な障害を持つ人それぞれに適した方法で発信できるものにする 、ということです。聴覚障害者向けの(着信時に)ライトを点滅する災害情報メッセージや、字の読めない人または視覚障害を持つ人向けの警告音およびテキストの音声変換などの案が現在話し合われています。 

2つ目は、市民モニタリング委員会の設置を通した、地域住民の巻き込みです。この委員会を通し、洪水対策インフラの設計、施工および維持の段階で、住民らと政府が定期的に意見交換し、住民らの声が洪水対策インフラに活かされるような仕組みです。 この監視委員会は、様々なグループの代表で構成され、異なる社会・経済的住民らの声を反映できるように配慮します。

3つ目は、洪水リスクを抱える住民のより安全な場所への移住支援です。この支援に際しては、特に脆弱な社会・経済要素を持つ家族を対象とした優先的移住や、対象者の技能やニーズに合わせた生活支援、土地および住宅の権利を男女で共同所有する選択肢の提示などが挙げられます。

南アジア地域における世界銀行の#ResilienceforAllを支援する取り組みとは?

世界銀行と防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)は協力して、すべての人々のための強靭性を高める(resilience for all)ためのレシピを開発しようとしています。

聴覚障害者向けの(着信時に)ライトを点滅する災害情報メッセージや、字の読めない人または視覚障害を持つ人向けの警告音およびテキストの音声変換などの案が現在話し合われています。

例えば、バングラデシュ政府は、緊急避難所を異なる身体的特徴を持つ人々が利用しやすくするために、世界銀行が融資するプロジェクトを通して改善に取り組んでいます。この中で、既存の避難所のデザインを見直し、いくつかの改善案が検討されています。 例えば、視力の弱い利用者を考慮した点字ブロックの導入、身体障害や体の不自由な利用者を考慮した段差の解消、お年寄りや妊婦、障害のある利用者が優先的に利用できる専用スペースとトイレ・シャワーブースの導入、識字教育を受けていない利用者や子供向けのイラストを使った案内図の作成などが挙げられています。

ネパールでは世界銀行が支援する災害復興の一環として、生活再建支援を行っていますが、その中でも、特に障害を持つ人々の異なる能力を活かした起業支援の方法が模索されています。この中で、異なる障害を持つ住民の能力を引き出し、それぞれの個性に適した起業アイディアを模索し、起業支援を行うトレーナーの育成がパイロット事業として開始されました。

このすべての人々の強靱性を高めるための世界銀行の取り組みについての詳細は、カリフォルニア大学デービス校、男女共同参画と災害・復興ネットワークおよび国際協力機構と共同で、11月20日に東京で開催するシンポジウムにて紹介します。


投稿者

Keiko Sakoda

Keiko Sakoda, Disaster Risk Management Specialist, World Bank

Bandita Sijapati

Bandita Sijapati, Senior Social Development Specialist, World Bank

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