過去 150 年間に、世界中でエネルギー技術と利用可能性が飛躍的に向上したことで、多くの仕事が簡略化・効率化された一方で、時代遅れになった仕事も数多くあります。例えば、洗濯はもはや手作業ではなくコインランドリーで済ませられますし、工場では自動化が進み、労働者に代わってロボットが組立ラインで働いています。そして現在では、AIチャットボットが人間のカスタマーサービス担当者に取って代わりつつあります。
アフリカでも状況は同じです。ただし、変化のスピードははるかにゆるやかです。域内では、今も約6億人が電力を利用できず、不安定な電力供給や高い電気料金が多くの産業の発展を妨げています。エネルギーアクセスが拡大すれば、経済を変革し、所得を増やし、雇用環境をより良い方向に再構築することができます。
雇用環境を早急に再構築する必要があるアフリカ地域にとって、これは願ってもない機会です。地域全体としては、労働年齢人口の大半が依然としてインフォーマル部門で自給自足の仕事に就いているため、極めて多くの世帯が常に貧困に陥るリスクに直面しています。ほとんどの人々は自営業や零細事業で生計を立てていますが、投資と成長の余地は限られています。フォーマル部門で労働に応じた賃金を得られる仕事に就いている労働者はごくわずかです。
企業が成長し、熟練労働者を雇用するには、事業の成功を支える環境に始まり、安定した規制枠組み、そして大規模かつ魅力的な市場へのアクセスに至るまで、必要とされる条件は数多くあります。その中でも、インフラ、とりわけエネルギーアクセスは決定的に重要な要素です。
世界銀行グループが、2030年までにアフリカ地域で3億人に電力を供給する「ミッション300」を活動の中心に据えているのは偶然ではありません。より良い雇用へのアクセスを通じて人々を貧困から救う上で、エネルギーは変化をもたらす鍵となります。
アフリカ地域で事業拡大を目指す企業にとって、手頃な価格で安定した電力が鍵となることは既に明らかです。高い電気料金は民間企業の競争力を損なうだけでなく、生産性を高めるために電力を多く必要とする技術を導入できず、手作業のプロセスに頼らざるを得ないことも少なくありません。さらに、電力供給の不安定さも依然として大きな課題であり、停電は事業活動に大きな混乱を引き起こし、雇用率を推定で5〜14%ポイント低下させています。
アグリビジネス、軽工業、鉱業、住宅・建設、保健医療、観光などの産業は、エネルギーをより集約的に利用できれば生産性を大幅に向上できるはずです(各セクターの雇用の潜在性については、アフリカの鼓動2025年10 月版で詳説)。例えば、医療分野では、画像処理やモニタリング技術を急速に発展させるには、こうしたエネルギーの安定供給と熟練労働者が不可欠です。同様に観光業では、携帯電話の充電機器、Wi-Fi接続、エアコンなど、最新の設備に大きく依存しています。気温管理の観点では、気候変動が地域に及ぼす最大の経済的影響は、洪水や干ばつではなく、熱ストレスによる労働力損失とされており、冷房設備の整備は雇用維持に欠かせません。
世界銀行は、地域の雇用創出におけるエネルギーアクセスの重要性を踏まえ、ミッション300の支援に向けて、今後5年間で国際開発協会(IDA)から300億ドルを活用すると表明しました。これは、アフリカ地域向け支援全体の約20%に相当します。
各国政府も同様に、大きなコミットメントを表明しています。改革を推進し、意欲的な目標を掲げ、国家エネルギーコンパクトを通じてエネルギー部門の変革を推進しています。国家エネルギーコンパクトでは、競争力のあるコストでのエネルギーインフラの拡張、地域電力統合の促進、民間セクターの参加促進による追加的な資金動員の実現、公益事業の強化という意欲的な目標が期限を定めて設定されています。
農村部や遠隔地では、分散型再生可能エネルギーが家庭や小規模事業に電力を供給することで、深刻なインフラギャップを解消しています。たとえば、シエラレオネでは、需要主導型のミニグリッドが製粉、冷蔵保管、デジタルサービスなどの生産活動電力を供給し、農村電化が商業的に成立することを証明しつつあります。
送電網整備は、学校、保健センター、その他の公共サービスに電力を供給することで、将来に向けてより強く、より健康で技能を持つ労働力の育成を支えています。エチオピアでは、エネルギー分野の取組みにより多様なセクターで雇用が生まれ、持続可能な収入源が確立されています。あるプロジェクトでは、エチオピア全土ですでに800万人以上に電力を供給し、1万9000以上の学校や診療所、政府施設が恩恵を受けています。
また、タンザニア農村電化促進プログラムは、食品加工、養魚業、建設、鉱業など1万6000社超の農村企業を電力網に接続し、生産性を高め、成長を可能にしてきました。セネガルでは、エネルギーアクセス・スケールアッププロジェクトが、600の診療所、200の学校、700の中小企業、20万世帯への電力供給を目指しています。この電化促進により、設置・メンテナンス・電化のサプライチェーン全体で広く雇用が生まれるとともに、教育、保健医療、中小企業の生産性が向上しています。
こうした取組みは、地域全体で進められているエネルギー分野の変革に向けた広範な取組みを反映するもので、単に照明の利用を可能にするだけでなく、大規模な雇用を創出する実用的なソリューションに焦点を当てています。
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