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国別所得を理解するために:世界銀行グループ加盟国の所得水準別分類-2026年度(2025年7月1日~2026年6月30日)

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世界銀行グループは、世界の国 [1] を低所得国、低中所得国、高中所得国、高所得国の4つの所得グループに分類しています。分類は前年度の1人あたり国民総所得(GNI)にもとづき、毎年7月1日に更新されます。GNIは、 アトラス方式の換算係数を用いて、米ドル [2] で表示されます。
 

所得分類の重要性

国の所得別分類は、その国の開発段階を反映するだけでなく、その国の開発の今後の軌道に影響を与える可能性もあります。所得レベルによって、政府開発援助および譲許的融資を受け取る資格の有無に影響を与えるからです。
 

所得分類の進化 

各国の所得別分類は、1980年代後半以降、大きく進化してきました。低所得国の数は着実に減少している一方、高所得国の数は増加しています。 

この変化は、多くの途上国における持続的成長、世界経済への統合加速、政策改革と国際機関による支援の影響など、広範な世界経済の展開を反映しています。1987年には対象国の30%が低所得国、25%が高所得国に分類されていましたが、2024年までに、それぞれ12%と40%へと変化しています。


地域別概要

所得分類の変化は、地域によって大きく異なります。

  • 東アジア・太平洋地域:1987年には26%の国が低所得国でしたが、2024年にはわずか3%に低下。
  • ヨーロッパ・中央アジア地域:1987年と2024年のどちらにおいても低所得国はなく、高所得国は71%から69%にわずかに低下しました。
  • ラテンアメリカ・カリブ海地域:低所得国は1987年の2カ国から2024年には0となり、高所得国が9%から46%に増加しました。
  • 中東・北アフリカ地域[3]: 低所得国は2カ国から3カ国に増え、高所得国は35%に増加しました。
  • 南アジア地域:1987年には域内諸国の100%が低所得国に分類されていたが、2024年までに低中所得国および高中所得国に移行しました。
  • サブサハラ・アフリカ地域:低所得国は75%から45%に低下し、1国は高所得国に到達しました。

具体的な経時的推移は、1987年以降の地域別の所得パターンを示す下の図を参照ください。


2026年度の分類基準値の改定

2024年の1人あたりアトラスGNIにもとづく26年度の改定後の国別所得分類はこちらをご覧ください。1人あたりアトラスGNIと分類基準値の改定に伴う変化が確認できます。基準値については、特別引出権(SDR)デフレーターを用いて毎年インフレ調整が行われます。調整により基準値が引き上げられることが多いものの、今年を含め、ほかの通貨に対するドル高のために基準値がわずかに引き下げられることもあります。


下の図は、新年度、所得区分が移行する国々:



注目すべき国の動向

コスタリカ - 「高中所得国」から「高所得国」に移行しました。コスタリカ経済は近年、過去3年間の平均成長率が4.7%と、一貫して力強い成長を遂げています。2023年、コスタリカの1人あたりアトラスGNIは、高中所得国の基準値に迫っていました。2024年には堅調な内需(個人消費と投資)に牽引され記録した4.3%という成長率は、コスタリカを今年「高所得国」に押し上げるのに十分な値でした。

カーボベルデとサモア:今年、「低中所得国」から「高中所得国」に移行。 

  • 2024年、カーボベルデのGDPは2023年比2ポイント増の7.3%成長を記録しました。成長を牽引したのは主に観光関連産業(+16.5%)で、 GDPデフレーターは2023年の4.1%から2024年には1.7%に減速しました。注目すべきことに、国連人口部は人口レベルを下方修正(2023年は-12.8%) したため、1人あたりアトラスGNIは全体で16.8%増加しました。
  • サモアの経済は、観光セクターの回復、継続的な復興努力、堅調な送金が押し上げる消費に牽引されて、2024年に9.4%成長しました。名目GNIは14.8%増加した。人口はわずかに(0.6%)増加したが、為替レートは安定していた。その結果、サモアの1人あたりアトラスGNIは4,650ドルに増加し、高中所得国に移行しました。

ナミビアは、今年「高中所得国」から「低中所得国」へと下方移行した唯一の国でした。2024年、ナミビアのGDPは2023年比0.7ポイント減の3.7%成長を記録しました。GDPデフレーターを用いて割り出したインフレ率は、2023年の6.6%から2024年には3.3%に減速しました。GDP成長率鈍化の主な要因の1つは、ダイヤモンドの需要低迷による鉱業と採石業の急激な減速(2023年の19.3%から2024年はマイナス1.2%)でした。人口データは、国連人口部によって上方修正され(2023年は+13.8%)、1人あたりアトラスGNIは12.9%減少しました。
 

政策担当者への提言

世界銀行グループの所得分類は、世界経済の動向と開発の進捗状況について貴重な洞察を提供しています。各国が経済成長を続ける中、所得分類は開発政策や戦略の策定にあたり重要であり続けるでしょう。政策担当者は、経済政策や戦略を策定する際、所得分類を考慮する必要があります。所得分類に影響を与える要因を理解することは、経済成長を刺激し、インフレを抑制し、世界経済への統合を促進する取組みの指針となり得ます。
 

詳細情報

世界銀行グループによる加盟国分類についての詳細はこちらをご覧ください。各国の貸出内容別分類のページに、所得別、地域別、世界銀行の貸出状況別の一覧と、過年度の分類へのリンクを掲載しています。一覧には、世界銀行加盟国に加え、人口3万人超のその他すべての国を含みます。分類は、2024年分として入手可能だった中で最も正確なGNIの値を反映しています。GNI値は、国によりさらに正確な最終推計値が発表された場合、改定の可能性があります。
 

2024年のGNI1人あたりGNIGDPGDP PPP人口のデータは、現在世界銀行のオープン・データ・カタログで入手可能です。いずれも推計値であり、修正の可能性があることに留意ください。お問い合せ:data@worldbank.org.



[1] 経済と同義で使われる「国」という用語は、政治的独立を意味するものではなく、当局が個別の社会統計または経済統計を報告している地域を指します。

[2] 二つ以上の為替レートが使われている国では、必要なデータが入手可能な場合、現地通貨の米ドル換算に使用する為替レートは、必要なデータが入手可能である場合、これら複数の為替レートの平均とします。

[3] 以前の発表では、アフガニスタンとパキスタンは南アジア地域グループに含まれていましたが、現在は中東・北アフリカ地域グループに含まれており、その間の地域別合計は更新されています。

 

本ブログ作成にあたり、同僚であるCharles KouameTamirat Yacobから大きな貢献がありました。感謝の意を表します。


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