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途上国が膨大な投資ニーズに対応するためには持続的な債務管理が不可欠

Photo credit: IDA

 

西尾昭彦 世界銀行開発金融総局担当副総裁

2030年はあと10年と少しにまで近づいていますが、途上国は未だ、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる重要かつ複雑な課題に直面しています。 とりわけ、目標達成に必要な投資資金をどう調達するかは大きな問題です。

途上国がSDGsを達成するためには、年間2.5兆ドルの資金調達ギャップを埋めなければならないという試算があります。 また、別の調査によると、資金不足は低所得国ではさらに深刻で、2030年にはGDPの15.5%相当の追加資金をインフラ、教育、保健にできるだけ均等に配分する必要があると指摘しています。

こうした投資拡大を賄う一つの手段に、債券発行による資金調達があります。この資金調達手法は、うまく行えば持続的・包摂的成長の実現の大きな一助となり得ます。 世界銀行グループの基金で最貧国を支援する国際開発協会(IDA)は、知識の供与、パートナーの動員、そして低所得国の開発目標達成に役立つ事業や改革に資金を提供しています。IDAは、無利子、又は非常に低金利の長期の譲許的融資やグラントを途上国に提供している他、財政管理強化に向けた能力構築や改革の実行を支援することにより、各国の債務管理改善を後押ししています。 

4月に開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行グループの春季会合では、債務に関する多くの議論が行われました。多くの参加者は、途上国の債務不履行リスクに対する脆弱性について懸念を表明し、債務の監視・報告の改善方法を検討すると共に、どうすれば各国がより持続可能な方法で債務レベルを管理できるかについて議論を行いました。また、貸し手がいかに貢献できるかについても話し合われました。

こうした懸念は、近年多くの国の債務レベルが顕著に上昇しているという認識とともに高まっています。各国が抱える債務リスクに早急に取り組むべきレベルまできていると言えるでしょう。世界銀行・IMFの債務持続性の枠組み(DSF)は、 DSFの対象となるIDA加盟国の半数が、対外債務によるリスクが高い、或いは既に債務リスクに陥っていると判断しています。

各国が、様々な経緯や理由から債務を抱えたり増加させている背景には、多様な政策や構造の違い、さらには異なる投資戦略があることは分かっています。しかし、最近の債務の規模や構成の傾向には、注視する必要があります。IDA加盟国の公的債務レベルは、2013年の大幅な下落以降、近年大幅に増加し、債務比率の中央値は2018年にはGDPの49%にまで増加しました。公的債務の構成もこの10年で大きく変化し、特にIDA加盟国の中でもより成長が進んだ国においては、非譲許的債務が増加しています。これにより債務返済コストが増加し、本来開発ニーズに充てる支出を締め付けています。

最近のこうした傾向からは、多くのIDA加盟国が、より多額で高金利の債務負担を抱えていることが読み取れます。持続可能なレベルを超えて債務を累積させれば、その国の開発効果は危機に瀕します。債務増加や債務に対する脆弱性は資金調達機会を制限し、その結果、成長やSDGsに対する進展を鈍化させる恐れがあります。 さらに、従来とは異なるあまり譲許的でない債務は、より複雑で、且つ透明性に欠けることが多いことから、その国の債務リスクの全容を十分に把握することが困難にすると共に、将来の債務問題を混乱させその対処を困難にさせる可能性を秘めています。

債務関連リスクの増大によりIDAは、この問題に対処するため、パートナーやステークホルダーとの連携を強化しています。 

世界銀行グループはこの数年間、国際通貨基金(IMF)と共に、債務リスクの高い国に対する総合的支援の強化に取り組んでいます。 具体的には、債務に対する脆弱性理解に役立つ債務分析および早期警戒システムの改善、債務の全体像を把握するための債務の透明性の向上、既存の債務に対しより効果的に対処できるような返済能力や財政リスク管理の強化、といった取組みに焦点を当てています。さらに世界銀行とIMFは、各国が抱える債務関連問題の監視・管理への支援向上を目指し、両機関の債務政策を見直しています。

世界銀行は、IDA加盟国が多額の債務によるリスクから自国を守るための対処を今後も支援していきます。こうした措置には、債務への懸念を緩和し優先度の高い歳出項目に資金を振り向けるための財政余地に不可欠となる、より多くの国内資金の動員などが含まれます。IDA加盟国の約半数だけでも対税収GDP比が基準値の15%を超えており、開発のために国内の公的資金を充てられる余地が大きいことを示唆しています。 

その他の重要な改革に、公共支出の効率性・選択の向上、より信頼できるデータ収集に基づいた債務管理の改善があげられます。こうした改革は、債務不履行の可能性を低下させ、債務の透明性を向上させると共に、持続可能な金融セクター開発を支援し、引いては経済の不安定性を緩和させます。債務リスクに対する脆弱性の低下は、健全なマクロ経済政策枠組み、および成長を促進する改革の採用にかかっています。 

世界銀行はパートナーとの連携を通じて、この課題に対処しています。アフリカ開発銀行と共催で、5月16〜17日にコートジボワールのアビジャンに政策立案者・実務者を招き、我々のような国際開発金融機関がより持続的で透明性のある公的債務管理の強化のために、どのような支援を提供できるかについて議論を行います。

こうした議論は、今後のIDAの業務を進める上での指針となります。なぜなら、債務の持続可能性・透明性を分野横断的なテーマとして第19次IDA対象期間の3年間に実施される事業に組み込み、持続可能な融資を拡充するためにいかにIDAの各手法を活用できるかを決定づける上での参考になるからです。

このようにして世界銀行は、IDAの支援を通じて各国が債務管理を改善し、開発目標を達成するために必要な資金を調達することにより、2030年以降も持続可能となることを目指していきます。


投稿者

西尾 昭彦

世界銀行 開発金融総局担当副総裁

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