インドのグジャラート州最大の都市アーメダバード市は、革新的な都市インフラと活気ある経済を誇り、インドで最も住みやすい都市であると評価されています。 また、政府がスマートシティ・ミッションの下で開発を進めている都市のひとつでもあります。こうした実績と750万人を超える人口にもかかわらず、市は急速な都市化、汚染、気候変動により悪化した水や衛生に関する需要を満たすのに苦心しています。
2022年11月、世界銀行は「グジャラート強靭な都市プロジェクト:アーメダバード市強靭性プロジェクト(G-ACRP)」に対し2億8,000万ドルの融資を承認しました。この融資は、730万人以上のアーメダバード市民が持続可能な下水処理サービスを利用できるようになることを明確な目的としています。そのためには、市の下水管理システムを以下4つの方法で改善する必要があります。i)長期的なパフォーマンスベースの設計・建設・運営(DBO)契約を通じて、強靭な廃水ネットワークと水処理システムを整備する、ii)GISを活用したO&M計画と予算管理システムを確立する、iii)水質汚染のモニタリング、および産業汚染リスク早期管理のためのデジタルシステムを活用する、iv)自治体の水処理サービス提供の財政的持続可能性を高めるため、政策改革を支援する。全体として、本事業は、重要な水処理インフラシステムの開発とともに、持続可能なサービス提供のための専門的な公共事業システムの導入において、アーメダバード市に重要な財政的および技術的支援を行うことが期待されています。
この課題を前に、アーメダバード市政府、特にアーメダバード市地方長官と幹部職員は、不安定な環境条件のもとで下水管理サービスを改善する最善の方法についてのヒントや指針を探ることにしました。
世界銀行は、本事業において、水処理分野でグローバルな経験を持つ福岡市を理想的な都市パートナーとして選びました。
2つの都市の物語
人口163万人の福岡市は、非常に効率的な固形廃棄物管理システム(「福岡方式」)と、民間主導の都市開発・再生計画を成功させたことで知られています。また、1978年に深刻な干ばつに見舞われた後、都市インフラ、特に水道と衛生システムを高度に発展させた経験を誇ります。現在、福岡市は世界で最も住みやすい都市の一つに数えられ、最先端産業の拠点となっているほか、Fukuoka Smart EAST構想を通じて先進的なスマートシティとして開発が進められています。
このような実績から、福岡市は、持続可能な都市開発に関する日本の知見と経験を共有する、日本政府と世界銀行のパートナーシップである世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)が実施する知見共有イベントで紹介される知見やノウハウの主要なリソースの一つとなっています。 TDLCの都市連携プログラム(CPP)では、自治体間の知見共有や、G-ACRPのような都市プロジェクトの実施支援を行っています。
日本の福岡市とインドのアーメダバード市という2つの地域、2つの都市は、アーメダバード市の知見共有と運営支援の要請から始まり、今では持続的な都市パートナーとなっています。 この協力関係の技術的側面を主導する私たちは、両自治体と技術専門家の間で目覚ましい相乗効果が生まれ、アーメダバード市が抱えていた下水管理面の課題を解決する新しいアイデアや専門的施策が生み出される経緯を目の当たりにしてきました。
組織としての機能および運営・維持管理文化の醸成
各機関の協力のもと、福岡市の高度に発達し適切に管理された下水管理システムの知見を応用することで、アーメダバード市公社(AMC)では以下5つの分野における制度・財務システムの強化が図られています。i) 運営・維持を含む資産管理 ii) 水質のモニタリングおよび水質汚染の早期警報システム iii)強靭なインフラ長期計画 iv) 廃水の再利用と管理 v) 水部門の財政的な持続可能性の向上。
私たちの取り組みは、2022年10月に、アーメダバード市(AMC)幹部とその技術者チームを福岡市に招き、同市の下水処理システムの視察を行うことから始まりました。その後、福岡市の技術チームは、2023年3月にG-ACRPに対する世界銀行初の実施支援ミッションに参加しました。さらに、福岡市の代表団がアーメダバード市を訪問し、ケーススタディの共有、技術クリニック、現場視察を通じて、アーメダバード市の下水道管理システムの改善に貢献しました。その際、プロジェクトに運営・維持管理文化を根付かせるために何が必要か、自治体の資産管理改善のための台帳システムの導入方法などが具体的に示されました。タスクチームとTDLCによる福岡市とアーメダバード市のさらなる連携強化として、日本の技術的インプットを通じてG-ACRPに恩恵をもたらしただけでなく、2023年7月にアーメダバード市で開催されたG20のUrban20サミット(U20)への参加が、両都市のより正式で長期的なパートナーシップの第一歩となりました。
AMCは福岡市の下水処理施設を学ぶことにより、資源効率、持続可能な運営、財政の持続可能性、技術的プロセスの健全性についての見識を広げることができました。 両市当局の関係者は、互いの有する機会、経験、教訓、課題について理解を深めました。また、AMCは、福岡市が長い期間と努力の末に洗練された都市下水システムを構築し、そしていま、アーメダバード市のために粘り強く戦略的な取り組みを考案中であることを確認しました。
このパートナーシップは、財政支援に技術支援や知見共有を組み合わせることで、いかに世界銀行の融資事業が与えるインパクトを増大することが可能であるかを明確に示しています。
関連項目:
- 世界銀行 東京開発ラーニングセンター
- 日本と世界銀行の協働:都市計画におけるユニバーサルデザインの推進に向けて
- イベント実施報告:「質の高い都市インフラのための資金調達」に関する テクニカルディープダイブ
- 横浜市主催第12回アジア・スマートシティ会議(ASCC)で世界銀行の「都市の高温化報告」を発表
- Promoting Urban Governance Excellence: The Somali Mayors Forum(英語)
- 広島の復興:危機後における都市再生の鑑
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