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統合都市洪水リスク管理:日本の経験から学ぶ

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都市洪水リスク管理分野における最新動向、課題、機会の詳細につきましては、このインタビュー動画をご覧ください。


1742年の夏、二つの台風が相次いで日本を直撃し、豪雨と主要な河川の氾濫を引き起こしました。洪水を目撃した若い僧侶による記録には、泥の波が堤防を壊し、村を押し流したと書かれています。堤防が破壊され、河川が氾濫する中、当時、日本最大の都市であり政治の中心であった江戸で、洪水の水が上昇しました。数日後にようやく水が引きましたが、死者数は6000人にのぼったということです。

洪水は、日本では珍しいことではありませんでしたが、1742年の江戸大洪水は近代日本において最悪の洪水となり、また、大都市圏で起きた初めての洪水災害となりました。これにより、江戸の発展を促してきた河川工学の変化に注目が集まりましたが、この変化は江戸の洪水に対する脆弱性を増す結果となりました。

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東京、神戸、大阪で開催された第二回分野別実務者研修会合(TDD):都市洪水リスク管理には9カ国から参加者がありました。写真提供:TDLC

今日、江戸の後継、東京にとっても洪水の脅威は依然として高いものではありますが、日本の都市洪水リスク管理能力は向上するばかりです。都市洪水に取り組む日本の努力に見られる顕著な特徴は、その統合的なアプローチであり、様々な利害関係者や洪水リスクの管理対策をまとめるものとなっています。 日本の都市は、一連のダイナミックな洪水管理対策を開発・採用しており、その範囲は、河川流域規模の河川改修へ向けての規制、計画、戦略から、先進的なインフラ・ソリューション、そして調整・通信メカニズムにまで渡っています。

第二回分野別実務者研修会合(TDD):統合都市洪水リスク管理(IUFRM)では、洪水リスクの軽減における日本の経験を研究しました。日本の経験は、類似する都市洪水課題に直面している国々に、貴重な教訓を提供してくれます。 都市洪水は、世界中の成長途上の都市に対し深刻な脅威を与えます。洪水に対する都市のレジリエンスに投資する必要性を認識した結果、都市洪水軽減プロジェクトにおける世界銀行の投資は、この10年間で着実に増えました。  防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の支援を受け、世界銀行の都市洪水コミュニティ・オブ・プラクティス(UFCOP)は都市洪水リスク管理に対する統合的なアプローチを推進し、都市洪水リスク管理の知識を利用しやすく、かつ応用しやすくし、イノベーション、優れた取組、教訓の伝達を容易にすることを目指しています。

 日本の統合的な洪水リスク管理における経験から得られる主な教訓は以下の通りです:

  • リスク評価とコミュニケーション:アプローチは、洪水の種類と現地の特徴に基づき選択され、異なる利害関係者の特定のニーズや目的を反映し、気候変動の不確実性について説明するものでなくてはならない。
  • 計画と優先順位:国は、地方自治体を支援するという重要な役割を担う。市政府も利害関係者間で合意が得られるよう仲介的な役割を果たさなくてはならない。
  • 投資の実施:可能な限り、洪水リスク管理に加え、他にも利益をもたらすような多機能システムを含んだ対策でなければならない。また、明確な統治メカニズムを設計、実施することも必要である。
  • 運営とメンテナンス:持続可能な運営とメンテナンスのためには、IUFRM対策の定期的な成果監視と評価、定期検査、メンテナンス、修繕、そして交換作業が必要となる。

2016年4月に計画され、日本が主催した第1回TDDは、次の4つのテーマによって構成されました:1)進化する日本のアプローチ、2)洪水リスク削減に向けた計画、3)洪水リスク管理における非構造物対策の統合、4)主要な構造的方策における計画から投資への転換

今年のTDDでは、第1回から得られた教訓やフィードバックに基づき、次の課題に焦点を当てました。1)都市洪水リスク評価とコミュニケーション・プロセス、2)洪水リスク削減に向けた投資の計画および優先順位付け、3)こうした投資の実施、4)こうした投資が、持続可能性を視野に入れた上でどのように運営、維持されるか。TDDの4つのトピックを補完する教訓ノート(Knowledge Note)も近日公表されます。

それぞれの都市洪水災害を1742年の関東大洪水まで遡って振り返り、そこから学ぶ長い歴史を通し、日本は同国の法律、計画、そして対策を再評価しました。日本の都市は、都市洪水リスクへの対応能力を向上するため、長い時間をかけて努力してきました。TDDおよび近々公開予定の教訓ノートは、日本の経験から学習をする、またとない機会を提供します。各国は、こうした機会を通し、都市洪水リスクに対するより深い理解、およびリスクを効果的に管理するために必要な統合的なアプローチを発展させることができるようになるのです。

第二回TDD:IUFRMは2019年4月22日から26日まで東京および神戸で開催。UFCOP、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)、GFDRR、世界銀行東京防災(DRM)ハブ、および日本の国土交通省、神戸市によって共催され、世界中から集まった実務者が互いに学び合い、IUFRMに関する世界と日本の経験を提示しました。

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投稿者

Jolanta Kryspin-Watson

Lead Disaster Risk Management Specialist and Regional Coordinator, East Asia and the Pacific

Jia Wen Hoe

Disaster Risk Management Consultant

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