世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は10月に設立20周年を迎え、日本および世界の知識と専門性を活用し、都市開発プロジェクトの成果を最大化してきた取り組みについて、祝賀を行いました。
TDLCは2004年、世界銀行と日本政府の協力により、アジア太平洋地域向けの地域遠隔学習センターとして設立されました。それから20年、日本および世界のベストプラクティスを共有するグローバルなナレッジハブ(知識拠点)へと進化し、開発への影響を最大化する活動を行っています。
TDLCの代表的な活動であるワークショッププログラム「 都市開発実務者向け対話型研修(テクニカル・ディープ・ダイブ:TDD) 」では、これまでに95か国から2000人以上の参加者が日本を訪れ、日本の都市から学び、新たな洞察を得て実行可能な解決策を見出してきました。これまでに実施したTDDは50回、支援した世界銀行のプロジェクトの数は95か国447、これらのプロジェクトの総額は730億ドルにのぼります(2024年10月現在)。1週間にわたるこのワークショップでは、廃棄物管理、手ごろな住宅、高齢化対応都市、公共交通指向型開発など、多岐にわたる都市開発のテーマが扱われています。
「東京」の名を冠しているものの、TDLCの活動は東京だけにとどまりません。「都市連携プログラム(CPP)」の参加都市である、北九州、神戸、富山、横浜、京都、福岡、広島といった日本の各都市とも連携しています。TDLCの知見共有活動を通じて、日本の都市は世界的な影響を与えてきました。例えば、日本の福岡市とインドのアーメダバード市との先駆的な協力では、福岡市の知識と運営支援により、アーメダバード市の下水処理の改善が実現しました。
写真: 世界銀行TDLCは、2024年10月に東京で特別シンポジウムを開催し、設立20周年を祝いました。このイベントには、世界銀行、日本政府、そして国際社会の代表者が一堂に会しました。
成果に満ちた章
2004年、東京で行われたTDLCのオープニングセレモニーで、ジェームズ・D・ウォルフェンソン世界銀行総裁(当時)は、「TDLCが、地域内の知識共有を推進するための協力の拠点となることを願っています。単なる新しい施設としてだけではなく、日本が地域や世界と新たに関わるための新しい章を開くものと信じています。」と 抱負を述べました。
20年が経ち、この新たな章は、知見共有と交流の成功事例で満たされることになりました。10月に東京で開催されたTDLC20周年記念イベントでは、TDLCのワークショップが世界中の都市開発プロジェクトの準備と実施に大きく貢献してきたことが示されました。その中には次のようなプロジェクトが含まれています:
- アンタナナリボ(マダガスカル):マダガスカルのアンタナナリボ首都圏・統合都市開発・レジリエンスプロジェクト(PRODUIR)は、TDLCの「都市洪水リスク管理」に関するTDDから得た知見を取り入れ、アンタナナリボの都市生活条件と洪水対応力を大幅に向上させました。このプロジェクトは、インフラ整備や都市環境の改善を通じて50万人に恩恵をもたらしました。
- ナラヤンガンジ(バングラデシュ):2016年に開催された「コンパクトシティ」に関するTDDに参加したナラヤンガンジ市のサリナ・ハヤット・アイヴィ市長は、日本の富山市にある美しく整備された富岩運河環水公園に触発され、「地方自治体ガバナンス・サービスプロジェクト(MGSP)」を通じてナラヤンガンジ市の運河を再開発することを決意しました。このプロジェクトは地方都市における都市公共空間への投資の重要性を示す模範となりました。この取り組みにより、安全性の向上、不動産価値の上昇、ビジネス活動の活発化といった成果がもたらされています。
- ダルエスサラーム(タンザニア):ダルエスサラーム都市交通改善プロジェクト(DUTP)は、公共交通型指向開発および土地開発利益還元に関するワークショップでの学びを基に、日本のアプローチを採用しました。このプロジェクトは、バス高速輸送システム(BRT)の導入、道路安全インフラの改善、機関の強化と改革、ICTの革新、安全対策、交通研究を含んだ3つの主要な構成要素で成り立っています。
写真: 2004年、東京開発学習センターの開所式で演説するジェームズ・ウルフェンソン世界銀行総裁(当時)。日本の谷垣禎一財務大臣(当時)および緒方貞子国際協力機構(JICA)理事長(当時)と共に。
TDLCの次なる章
TDLCは今後も、極度の貧困の撲滅と共通の繁栄の推進という世界銀行の使命を支援し続けます。
「今日の世界的な課題はかつてないほど複雑で相互に関連しており、継続的かつ新たに発生する危機に対処するためには、他国の革新的なアイデアや成功事例が必要です。」と、TDLCを率いるクリストファー・パブロ世界銀行上級都市専門官は述べています。
「TDLCの過去20年間の歩みは、知見共有と協力の力を証明しています。日本政府や国内の各都市とのパートナーシップを通じて、TDLCは日本の専門知識を活用し、世界に影響を与え、よりリバブルで持続可能な都市づくりに貢献してきました。」
TDLCは20周年を祝うとともに、知見共有の使命を継続し、未来のリバブルな都市づくりに取り組んでいきます。
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