気候変動、紛争、パンデミックといった地球規模の課題に対処するため、開発途上国は今から2030年まで毎年平均2.4兆ドルの資金が必要になります。この資金がなければ、子どもたちは標準以下の学校に通い、家族は質の高い医療を受けられず、地域社会は気候変動の影響への対応に苦闘することになるでしょう。
二国間贈与や多国間開発銀行だけでは、このニーズを満たすだけの資金がありません。この取り組みに民間資本を動員することが極めて重要です。しかし、低所得国や中所得国にとって、必要な民間資本を誘致し、経済成長を加速させる基盤を築くことはますます困難になっています。新興経済の投資リスクとリターン比率は、依然として十分ではないのです。
民間部門は、資金調達構造の改善、リスクのバランスと配分の新たな方法、パートナーシップの再構築なしには前進できません。
Ajay Banga総裁によって設立された世界銀行グループの民間セクター投資ラボはこの課題を認識した上で提案した解決策の1つが、当組織の保証業務の強化でした。そのため、私たちは民間資本を活性化し、住みよい地球上で持続可能な開発を加速するための画期的な新しいプラットフォームを立ち上げました。新しい世界銀行グループ保証プラットフォームは、2030年までに保証額を200億ドルに増やすよう計画しています。
世界銀行グループは依然として開発途上国に多額の融資を行っていますが、融資機関としての役割からレバレッジをかける機関としての役割へと転換しています。世界銀行グループの多数国間投資保証機関(MIGA)に設置された保証プラットフォームは、同グループのすべての保証業務をワンストップで提供するものとなります。このプラットフォームには、信用保証(対公共部門または民間部門への融資)、政治リスク保険(対民間部門のプロジェクトまたは官民パートナーシップ)、そして公共部門のリスクに対する貿易金融保証の3つの製品群があります。
私たちは、最も困難な開発課題に取り組むために民間資金を増強する保証の力を目の当たりにしてきました。世界銀行が主導する国別・セクター別対話と、国際金融公社(IFC)の融資および技術支援により、保証は持続可能なインフラを切実に必要とする多くの低所得国で民間資本を解き放つ最後のピースとなり得ます。
たとえば、コンゴ民主共和国(DRC)におけるアフリカ最大のミニグリッド建設を支援するために、世界銀行グループとIFCの民間セクター支援の一環として、政治リスク保証が活用されました。このミニグリッドは、 DRCの28,000以上の世帯と企業に手頃な価格で持続可能な電力を供給しています。これは、保証がアフリカの少なくとも3億人のエネルギーアクセスを向上させるという世界銀行グループの目標にどのように貢献できるかを示す、数え切れないほどの例の1つにすぎません。
世界銀行の融資とIFCの助言と協力に基づくMIGAの保証により、セネガル初の電気バス高速輸送システムを支援する外国直接投資が促進されました。18.3キロメートルの路線は毎日30万人の乗客を輸送し、このプロジェクトにより年間59,000トンの二酸化炭素相当の削減が見込まれています。
しかし、保証の潜在能力をより有効に活用することは、ほんの始まりに過ぎません。歴史が示すように、国と民間セクターの顧客ニーズを満たすためにイノベーションに目を向けることが最大の効果をもたらします。したがって、イノベーションも私たちの新しいプラットフォームの中核となるのです。
私たちは、保証手段を用いて国境を越えた投資を促進してきた素晴らしい実績があります。2024年度、世界銀行グループはこのプラットフォームの一部の商品を用いて、約103億ドルの新規保証を発行しました。内MIGAが82億ドル、IFCが14億ドル、世界銀行が約7億ドルです。保証は、資本の効率的な使用にもなります。例えば、MIGAは1ドルの運転資本につき、15ドルの民間資本を動員することができます。これは、株主資本の非常に効率的な活用法です。
私たちは、保証業務が国際開発の資金調達にとって強力なツールとして台頭する転換期にいます。この保証プラットフォームは、世界銀行グループが80年以上にわたって培ってきた各国政府との協働に関する総合的な専門知識を活用し、開発途上国における民間セクターの投資を支援し、ニーズの高いインパクトのある解決策を支援する準備が整っています。
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