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協力することで高まる防災力:東日本大震災から10年、世界が日本から学ぶこと

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2011?8???????????????????????????????????? 2011年8月、三嶋神社から宮城県南三陸町歌津地区を見下ろした風景(写真:竹本祥子)

2011年3月11日は多くの日本人にとって決して忘れることのできない日となりました。マグニチュード9.0の巨大地震は、日本中を激しい揺れで襲い、大津波が多くの命や人々の生活、そして街全体までもを呑み込んでいきました。その時目の当たりにした自然災害が及ぼす被害の大きさへの衝撃や、被災された多くの人々の悲しみは、今も胸に強く刻まれています。そして、同じような悲劇が世界中で二度と繰り返されないように、災害への備えと対策の重要性を発信し、その実装に貢献していきたいと、更に強く決心したことを深く記憶しています。

この日をきっかけに、私たちのように、「防災」の重要性を再認識し、そのための一歩を踏み出した人たちは少なくないのではないでしょうか。

今日で東日本大震災から10年が経ちました。東日本大震災では、地震による津波が東北地方の海岸線に押し寄せ、黒い水の壁となって町や村を破壊しました。その結果、19,729人の尊い命が失われ、2,559人の方々が現在も行方不明となっています。この地震と津波は、福島第一原子力発電所の事故にもつながり、より多くの方々が避難を余儀なくされ、人々の暮らしに大きな影響を及ぼしました。

大震災と津波からこのような大きな影響を受けたにもかかわらず、一つ一つの課題に辛抱強く果敢に向き合い、対応しながら、希望を持ち続け、「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」を目指して取り組んできた被災地や日本の姿は、世界中の国や地域に大きな感動を与え、指針を示すものとなっています。また東日本大震災からの復興の経験や教訓を学び、自らの防災力向上に向けた取り組みに役立てたいという関心も高まっています。 . 

Kawamachi Terrace in Yuriage District, Natori City in 2019.  Businesses and communities come together in a new multifunctional market space constructed above the reconstructed seawalls.
宮城県名取市閖上地区のかわまちてらす閖上(2019年)は、再整備された堤防の上に事業者や地域の人々のための複合商業施設として建てられました。(写真:竹本祥子)

東日本大震災以降、世界銀行は日本政府と連携し、特に「日本―世界銀行防災共同プログラム」を通して、自然災害のリスク管理に関する教訓を日本や世界中の専門家と共に取りまとめてきました。これらの教訓は世界に向けて広く共有され、防災の主流化のために役立てられています。世界銀行が2014年に発表した報告書「大規模震災から学ぶ:東日本大震災からの教訓」では、耐震工学から都市計画に至る幅広い分野の何十人もの専門家によって、2011年3月11日に発生した事象、そして、その後数日、数ヵ月、数年間の復興過程や関連する取り組みが分析されました。そこで得られた主な教訓は、36本のナレッジノートとして、分野ごとにまとめられ、世界中の実務者らに広く共有されました。

以降、「日本―世界銀行防災共同プログラム」は継続して、東日本大震災や過去の災害から得られる教訓の取りまとめを行い、分析や発信を続けています。このプログラムは、「強靭なインフラ」、「リスクの特定、削減と備え」、そして「災害リスクファイナンスと保険」の3分野に焦点を当て、途上国の防災力向上に資することを目指しています。

このようにして、本プログラムを通じて日本の防災の知見や教訓を様々な分野において取りまとめ、開発支援の現場に伝えていく活動の中で、繰り返し浮かび上がる重要な教訓が下記の通り3つあります。 

  1. 災害発生前に防災計画を立てるなど、事前防災の取り組み

  2. 組織やセクターを超えた、防災に係る協力と役割分担の明確化

  3. 過去の災害からの教訓に基づき、政策やシステムを継続的に見直し、改善

例えば、災害発生時の事業継続計画や様々なステークホルダー間の取り決めが事前に準備されていれば、自然災害が起きた場合のヒト・モノ・カネの動きを円滑にする仕組みを事前に整備することができ、迅速な物資供給や公共サービスの再開に繋がります。さらに、このように 官民の間で災害に対する事前に合意した仕組みがあれば、災害発生後のみならず、災害発生前にも、重要情報の共有や合意に基づいたそれぞれの役割に応じた備えが可能となります。 このような事前の取り決めに関する例としては、災害時の民間企業による公共インフラの修繕計画、民間企業間での防災費用の分担に関する取り決め、自治体間での緊急対応人員や資源共有に関する事前協定などがあります。

このような、様々な分野における日本からの防災の教訓は、世界銀行が支援する途上国の開発をよりレジリエントにするために、活かされているのです。
(事例を取りまとめた英文記事はこちらをご覧ください)

この10年という節目において、世界は、新型コロナウィルス感染症拡大や自然災害、気候変動といった複合的な緊急事態の渦中にあります。東日本大震災からも、上記した、事前に自然災害に備えることの重要性、そして、互いに協力し合うことで防災力は高められる、などの教訓は明確になりました。このような教訓は、気候変動、急速な都市化、公衆衛生上の危機といった状況にも活用可能ではないでしょうか。

より激甚かつ予測不能な危機の発生頻度が増す中、公的機関や民間セクターのみで災害に備え対応することは、限りなく不可能に近い現状となっています。 そのため、個人やコミュニティ、企業や団体が、各々で事前防災の重要性を認識し、災害時にどのように対応すべきかを今から考え、準備することが急務となっています。そうすることによって、事前にどのような準備が必要か、また多様なステークホルダーとどのように協力することができるのかを考え、新たな協力関係の構築や計画・実施能力の向上に繋がると期待されます。このような、平常時からの防災活動をきっかけとしたつながりは、緊急時のみならず、様々な面で組織や地域社会全体をより豊かにするヒントや可能性を秘めています。10年前、東日本大震災を機に、日本だけでなく世界中が見つめなおした自然災害の威力と防災の重要性。あの日の思いを胸に、こうした取り組みの拡大に向けた活動は、これからも続きます。

関連項目:

特集:Learning from Megadisasters: A Decade of Lessons from the Great East Japan Earthquake(英語)

セクター別情報: http://pubdocs.worldbank.org/en/662541615452748768/lessons-from-great-east-japan-earthquake-drmhubtokyo.pdf(英語、PDF)

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投稿者

Naho Shibuya

Disaster Risk Management Specialist, The World Bank

Keiko Sakoda

Keiko Sakoda, Disaster Risk Management Specialist, World Bank

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