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道路土砂災害リスク管理ハンドブック・Eラーニング

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??????? 写真:高松正嗣

急峻な山間地において、道路インフラは土砂災害に対して非常に脆弱です。
ネパールのヒマラヤ山中で狭い道路を走行しているところを想像してみてください。左には急斜面、右には崖。雨が降り、山肌から流れてきた泥が道を覆っています。大きなトラックが道をふさぎ、あなたは通行するのがやっと。もし今土砂崩れが起きれば、この道は数日間封鎖されるでしょう。近隣の町からのアクセスはこの道の他になく、土砂を取り除き道路を補修するための重機を、遠くから運んで来なければならないからです。

ジオハザードは、「地質・地形・気候の状況や過程に起因する事象で、人命や資産、自然環境および構造物にとって深刻な脅威となり得るもの」と定義されます。落石、がけ崩れ、地すべり、土石流、浸食はいずれもジオハザードに含まれます(図1)。また、氷河湖決壊洪水(GLOF: glacial lake outburst flood)や雪崩は、発生頻度は下がるものの、甚大な影響を及ぼすジオハザードです。ジオハザードは尊い命を奪い、建物や重要インフラに広範な物理的損害を及ぼします。さらに、交通、情報通信、水道、電力供給などのサービスに混乱をきたすため、経済や人々の生活への影響も大きいです。気候変動に伴う激しい降雨や、急峻な地形での道路建設や車線拡張により、多くの国が重大なジオハザードリスクにさらされています。その一方で、遠隔地域へのアクセスや都市圏への移動のためには、やはり道路の建設や拡張が必要です。


図1:主な道路土砂災害分類。(a) 落石、(b)がけ崩れ、(c)土砂崩れ、(d)地すべり、(e)土石流、(f)河川の浸食。情報源:世界銀行。転載は要許可申請。
図1:主な道路土砂災害分類。(a) 落石、(b)がけ崩れ、(c)土砂崩れ、(d)地すべり、(e)土石流、(f)河川の浸食。情報源:世界銀行。転載は要許可申請。


道路やその利用者、周辺住民や影響を受ける人々へのジオハザードリスクを積極的に管理する手法を紹介するために、「道路土砂災害リスク管理ハンドブック」が日本 - 世界銀行防災共同プログラムの支援により作成されました。ハンドブックには、日本、セルビアおよびブラジルの事例や、付録A(付託条項)や付録B(オペレーション・マニュアル)が含まれます。付録AとBでは、道路土砂災害リスク管理の技術支援プロジェクトで利用できる付託条項のひな型や、道路土砂災害リスク管理の実務者向けのオペレーション・マニュアルが参照できます。

シエラレオネ政府は、道路土砂災害リスク管理に関する政策や計画の策定・実施のために、付録Aの組織的な能力評価や目標設定のひな型を活用し、道路交通セクターの主要関係機関の現状能力を分析・評価しました。評価の結果は「道路土砂災害リスク管理:シエラレオネの事例」にまとめられ、道路ジオハザードの軽減に関する政策や計画、取り組みの実効性を高めるための実行計画が提案されました。

Geohazard

また、道路土砂災害リスク管理Eラーニングが世界銀行のオープンラーニングキャンパス(OLC)で外部受講者も利用可能となり、次の2つのモジュールを通じ、道路土砂災害リスク管理について体系的・包括的に学べるようになりました。

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モジュール1:道路土砂災害リスク管理Eラーニング

第1部:道路土砂災害リスク管理の枠組みでは、基本概念やハンドブックの背景を紹介しています。

第2部:組織の能力と連携では、ジオハザードリスク管理のための組織のあり方に触れています。

第3部:システム設計では、リスクの特定・分析・評価や、防災知識の普及のための計画について解説しています。

第4部:工学と設計では、ジオハザードリスクへの工学的な解決策を例示します。

第5部:運営と維持管理では、運営・維持管理を通じてジオハザードリスクの影響を最小化するためのハードとソフトの解決策の双方を取り上げます。

第6部:緊急時対応計画では、災害後の対応や復旧といった緊急時対応計画に係る問題、予算に関する取り決めや緊急事態への備えといった重要な問題に触れています。

さらに、このモジュールでは、参考文献リストや他のオンラインリソースを紹介します。

モジュール2:道路土砂災害リスク管理の事例

教科書的な理論や学びは実社会で行動に移し、実践されなければなりません。このモジュールでは、南アジアのジオハザードリスク対策として行われた調査や研修、ワークショップを紹介します。南アジアは土砂崩れや他のジオハザードリスクが非常に大きく、特にヒマラヤおよびヒンデゥークシュ山脈におけるリスクは顕著です。モジュールで紹介される事例は、EUの支援によるGFDRRの地域技術支援プログラム、土砂崩れやジオハザード・リスクへの強靭性構築に関する南アジア地域プログラムの下で行われた活動から集められた事例です。  

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ジオハザードリスク対策は容易ではありません。このようなツールや事例により、国際的な土砂災害現場で活躍される方々が、それぞれの地域や国で課題に取り組む際に役立つ知識やアイデアを得られることを願っています。

リソース:

関連項目:


投稿者

Akiko Toya

Disaster Risk Management (DRM) Specialist

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