ブログチャンネル Voices -ヴォイス-

持続可能な未来にとって、なぜ強靱なインフラが必要か

このページの言語:
持続可能な未来にとって、なぜ強靱なインフラが必要か 写真提供者:世界銀行/Antony Tran

先日、日本の姫路市で「防災グローバルフォーラム2024:自然災害リスクへの理解を深める(Understanding Risk Global Forum 2024 (UR2024))」が閉幕した際、私は強靱性において頑強なインフラストラクチャーが担う重要な役割を再認識しました。

私たちは、気候変動や債務の急増、脆弱性の高まりなど世界規模の難題に直面し続けています。2023年の自然災害の発生件数は約400件、これによる死者は約87,000人、経済損失は2,027億ドルに達しました。これらの数字から、持続可能な未来を築く上で強靱なインフラと災害準備が急務であることが浮き彫りになりました。建物や道路だけでなく、脆弱な状況であっても強靱なインフラが安全性やウェルビーング、コミュニティの繁栄に確実に寄与することが明らかになったのです。例えば、誰でも、特に障がい者も利用できるインフラを構築することや、医療システムの強靱化を進め、災害中と災害後に必須サービスを確実に提供できるようすることも、強靱なインフラに含まれます。

世界銀行は、このような難題に対して、より迅速かつ柔軟に対応できるよう進化しています。事後対応から事前準備へと移行するために、UR24を主催した世界銀行の防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)は不可欠な存在です。また世界銀行は、インフラ開発の全ての側面に強靱性を組み入れようと幅広く活動しています。例えば、気候の影響や自然災害に適応したり、それらを軽減したりする構造物の設計や、最先端技術と革新的な設計原則の利用などに取り組んでいます。都市の強靱性も重要分野の1つです。強靱化により災害への耐性と災害からの復旧を確実に実現することができます。

私たちは、これらの取組みで成功を収めてきました。例えば、マダガスカルでは緊急事態への備えと対応システムを改善し、ベトナムでは輸送インフラの強靱化プロジェクトにより1,130万の人々に恩恵をもたらしました。ロシア侵攻後のウクライナでは、損害評価の迅速化を実現しました。チャドでは、洪水被害の軽減、都市部の持続可能な水管理の推進を、自然に根ざした解決策(NbS)を通じて支援しました。

GFDRRは、世界銀行と共に、35カ国564,000校の学生1億2,100万人の安全確保に貢献しています。スリランカのコロンボでは、自然に根ざした解決策によって湿地帯を保護することで洪水を防ぐことができ、公共空間が生まれ、都市部の貧困層の収入が支えられています。適切なスペーシャル・プランニングと洪水緩和への投資は、GFDRRの支援の下、マリのバマコやアフリカおよびアジアのその他100を超える都市で実施されています。

UR24では、日本の強靱性構築に関する豊富な歴史から、災害リスク管理に対する革新的なアプローチを探りました。UR24のテーマである「伝統、革新、強靱性」は、長年の慣行と最先端の解決策の融合を強調したテーマでした。日本は来年で阪神・淡路大震災の発生から30年目を迎えますが、この大震災での経験や災害準備への継続的な取組みは貴重な教訓となっています。

UR24には135カ国から1,700人が参加し、協調と知識の共有もその中心的なトピックでした。このようなネットワークは、アイデアやベストプラクティスの共有を通じて強靱な未来を築くために不可欠です。

 

The World Bank

UR2024の前に行われた高校生によるグアン・チェン世界銀行インフラストラクチャー担当副総裁へのプレゼンテーション
写真提供者:世界銀行/Antony Tran

UR24フォーラムの成果は、世界中のコミュニティを支える持続可能で強靭なシステムを推進するための、世界銀行の継続的な取り組みがベースとなっています。例えば、世界銀行の新しい危機への備え・対応のためのツールキット(Crisis Preparedness and Response Toolkit)によって、より迅速かつ効果的な危機対応が可能になります。特に世界銀行の国際開発協会からの資金を受けることができる低所得国において、危機への備えを資金調達と結びつけることで、気候変動や自然災害に対して最も脆弱な人々への支援を強化することができる。

資金援助以外にも、私たちは「知識銀行(ナレッジバンク)」として機能しており、技術支援と専門知識を通じた革新と協調を進めています。

今後、世界銀行は2025年までに資金の45%を気候関連プロジェクトに投資することを目標とし、低所得国への気候投資において最大の多国間出資者になることを目指します。また、地震や津波など、気候に関連しない自然災害への備えへの投資も継続していきます。これらのコミットメントは、仙台フレームワーク、パリ協定、持続可能な開発目標などのグローバルな枠組みに沿ったものです。

2024年7月1日の都市・防災・強靭性・土地グローバルプラクティス(Global Practice for Urban Resilience, Disaster Risk Management and Land)とGFDRRの世界銀行インフラストラクチャー・プラクティスグループへの統合は、1つの重要な節目になります。この統合により、協力して取り組むことで、GFDRRの専門知識とリソースを活用して大規模災害および気候リスクの管理への私たちの対応力を一層強化することができます。

日本政府の支援を受け、GFDRRが運営する世界銀行東京防災ハブが開催したUR24は、協働と革新の力をアピールする場となりました。今後も、これらの強みを活かして、コミュニティの強化と、より安全かつ強靱で持続可能な世界の構築を目指していきましょう。


Guangzhe Chen

Vice President for Infrastructure, The World Bank

コメントを投稿する

メールアドレスは公開されません
残り文字数: 1000