世界は今、紛争、コロナ、食料不安、気候変動、債務の拡大といった重複する危機に悩まされていますが、いずれの危機も、最貧困層にとりわけ深刻な打撃となっていることがわかっています。 食料価格の高騰、保健サービスへのアクセスにおける格差、気候変動の特に深刻な影響等により、最脆弱層はこれまで以上に脆弱な状態に追いやられつつあります。
世界銀行のグループ機関として世界の74の最貧困国を支援する国際開発協会(IDA)は、このほど第20次サイクル(IDA20)を開始し、記念行事が東京において開催されました。 過去に例のない1年前倒しで開始されたIDA20の増資交渉は、52の高・中所得国からの総額235億ドルの拠出金を含め、過去最高額の930億ドルで妥結しました。これによりIDAは複数の危機への対応において各国を支援する態勢を整えることができました。また、重複する危機を乗り切るために国際社会の連帯が不可欠である今、息の長い回復を目指す各国へのIDAによる支援表明はそうした連携の最たる例と言えます。
IDAには、エボラ出血熱、地震、洪水、干ばつ等の危機に直面した国々の支援において長年にわたる実績があります。とは言え、コロナにより発生した過去に例のない膨大なニーズを満たすために前倒しされたIDA20のサイクルは、危機への取組みを明確に意図しているという意味で特別です。 この点は、総合テーマである「危機からのより良い回復:環境に配慮した強靭で包摂的な未来に向けて」からも明らかです。課題に直面する各国が効果的かつ実績のあるソリューションを策定・実施できるよう、IDA20は以下の5つの項目に沿って支援を進めて行きます。
1. 危機の影響をまともに受けているのは人々であり、人々こそがIDA20の中心にあります。
IDA20プログラムを支えているのは、人的資本への投資、すなわち人、保健、教育への投資を最優先していることです。人への投資はその国の全体的な経済の健全性と強靭性に貢献するからです。IDA20は包摂性を重視し、女性、子供、障害者、さらには脆弱性や紛争の影響下に暮らす人々を含め、誰ひとり取りこぼさないことを意図しています。
2. IDA20は、危機への備えを特に重視しており、各国が緊急事態を乗り越えられるよう、パンデミックへの備えと食料システムの健全性の強化に力を入れています。
IDAは、今回のパッケージを通じ、パンデミック、金融ショック、自然災害等、将来の危機に備え対応できるよう各国とそのシステムへの支援を強化していきます。IDA20はまた、食料システムの強化と強靭化への投資として、農業セクター支援と、食料価格高騰による家計への影響緩和を進めて行きます。
3. IDA20は、気候変動による長期的危機との闘いと、最貧困層への影響緩和をこれまで以上意欲的に進めていきます。
IDA20は、パリ協定に沿って業務を進める等、気候変動への取組みを優先します。コベネフィット型気候変動対策を強化し、環境に配慮した資金提供と生態系サービスで高い目標を掲げることで、各国が気候変動の高まる影響に適応し、生物多様性を保全できるよう支援していきます。
4. 最脆弱層を支援するため、IDA20は各国が追加資金にアクセスできる特例を設けています。
例えば、難民・受入れコミュニティ向け融資制度(WHR)は、資格を満たした受入れ国が難民や受入れコミュニティの人々のために意味のある長期的な開発機会を生み出せるよう支援するものです。同様に、脆弱性・紛争・暴力(FCV)エンベロープは、切実なFCVリスクに直面する国々に資金を提供しています。
5. 危機が債務の脆弱性を悪化させるとの認識の下、IDA20には、持続可能な債務管理について適切に対処するための先を見越したな計画が用意されています。
その計画を支えているのが持続可能な開発金融政策(SDFP)です。この政策は、各国が透明で持続可能な資金調達に向かって進むよう、またIDAをはじめとする債権者が各国の改革支援において一層の協調を図るよう奨励するものです。SDFPは、債務管理、財政の持続可能性、債務の透明性の各問題に中・長期にわたり体系的かつ積極的に取り組めるよう貢献しています。
IDAは、現状に細かく配慮したIDA20パッケージを通じ、様々な危機への対応の一層の支援と、最貧国の強靱な回復の促進を意図したプロジェクトに資金を提供します。IDA20サイクルの対象期間は、2022年7月1日から2025年6月30日です。
IDAは、経済の再建と生活水準の向上を図りつつ、長期的な開発目標に引き続き全力で取り組む国々と連携していく用意があります。ハッシュタグ#IDAworksで、IDAによる今後の取組みの成果やインパクトをフォローしていただけます。
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