ブログチャンネル Voices -ヴォイス-

コロナ危機からの持続的な回復には強靭性の構築が不可欠

このページの言語:
A man in an orange shirt and hard hat holding a bullhorn on a hill overlooking a city. A man in an orange shirt and hard hat holding a bullhorn on a hill overlooking a city.

新型コロナウイルス感染症で世界は大きく後退した。1日1.9ドル以下で暮らす貧困人口は1億人以上増えた。

世界経済の成長率は、2020年のマイナス3.4%から回復したとはいえ、今年は昨年の5.5%から4.1%に下がる見込みだ。先進国の回復が進む一方、サブサハラなど低所得国の回復は遅れている。 

今年に入ってからも、ブラジルやマダガスカルの洪水、トンガの海底火山噴火など、自然災害が途上国の開発において大きなリスクとなっている。新型コロナに洪水、嵐、熱波が加わり、貧困の罠が深まりかねない。  気候変動で2030年にはさらに1億3,000万人が貧困に陥る可能性がある。今、行動を起こさなければ、貧困撲滅に向けた取り組みは意味を失ってしまうだろう。 

経済をより強靭に、持続可能なものへと回復させるためには、物価上昇の適切な管理、債務への対処に加え、気候変動への対応が必要である。

世銀グループは、コロナからの持続可能な回復に強力に取り組み、2020年4月から2021年6月の間、過去最大となる1,570億ドル超の支援(うち500億ドルは最貧国74カ国を支援する国際開発協会(IDA)による支援)を実施した。

さらに世銀グループは今後、環境に配慮(グリーン)した強靭で包摂的な開発アプローチ(GRID)の下、コロナ禍からの回復策の中に気候変動への適応と強靭化を取り込むこととした。 

世銀グループの国別援助戦略には、気候変動が反映されている(グリーン)。このほか、GRID における強靭化へのアプローチとしては、インフラの強靭化、災害時の緊急対応、災害時の資金確保(防災保険など)といった支援を展開している(強靭)。包摂的なアプローチとしては、困窮する10億人超の人々へ100億ドル超の資金を供与している(包摂)。

気候変動で災害が深刻化する中、防災の重要性は高まっているが、世銀だけでは取り組めない。

日本は、防災の重要性を唱えるだけでなく行動に移し、国際社会を主導してきた。IDA 第20次増資が良い例だ。防災など危機への備えの強化が4つの横断的取り組みの一つに格上げされたのは、日本などの努力の賜物だ。

また、「日本・世界銀行防災共同プログラム」の下、世界97カ国で防災強化に向けた優先事項の特定、政策枠組みの策定、調査、資金動員のための準備など、さまざまな支援が行われてきた。  日本との協力は、資金協力に留まるものではなく、防災分野における高度な知見や組織運営からも学ぶところは大きい。こうした取り組みの中心にあるのが、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の中核をなす「東京防災ハブ」だ。

途上国における今後の喫緊の課題は、災害に耐える強靭なインフラの整備だ。災害で崩壊したインフラの改修に必要な費用は少なく見積もっても年3,910億ドルかかると言われている。一方、途上国が持つインフラ補修のための予算は年180億ドル程度だ。道路、鉄道、送電線、発電所、上下水道、学校の強靭化への道のりは始まったばかりだ。だが、防災の経験が長い日本には最先端の技術と政策がある。

国際社会は今、国連防災機関(UNDRR)が策定した「仙台防災枠組」(「兵庫防災枠組2005~2015」の後継)の中間レビューに取り組んでいる。世銀は、東京防災ハブが支援してきた数々の素晴らしい協力関係を一層拡大していきたいと考えている。このような取り組みは、環境に配慮した強靭で包摂的なパンデミックからの回復と、仙台防災枠組のビジョンの実現のために不可欠である。

* この記事は、国際開発ジャーナル2022年4月号に最初に掲載されたものです。PDFはこちらをご覧ください。


投稿者

コメントを投稿する

メールアドレスは公開されません
残り文字数: 1000