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世界銀行グループ加盟国の所得水準別分類-2024年度(2023年7月1日~2024年6月30日)

世界銀行グループは、世界の国[1] を低所得国、低中所得国、高中所得国、高所得国の4つの所得グループに分類している。分類は前年度の1人あたり国民総所得(GNI)に基づき、毎年7月1日に更新される。GNIは、1989年に更新版が導入されたアトラス方式[3]の換算係数を用いて、米ドル[2]で表示される。世界銀行の所得別分類は、その国の開発段階を反映する目的とし、経済力の指標として広く利用可能な国民1人あたりアトラスGNIに基づいている。

各国の所得別分類は、1980年代後半以降、大きく進化してきた。1987年には対象国の30%が低所得国に分類されていたが、2022年にはわずか12%まで減っている。 減少の程度は地域によって異なるが、それまでより高い所得分類に移行した国が増えたことで、2022年の低所得国の割合はサブサハラ・アフリカ地域が74%から46%に、東アジア太平洋地域が26%から3%に、南アジア地域が100%から13%にそれぞれ減少した。推移は、地域別の所得パターンを示した下のグラフを参照のこと。

分類の変更

2022年の1人あたりGNIに基づく、24年度の国別所得分類の最新版はこちら

統計上の観点から、分類は2つの理由で変更の可能性がある:

  1. 1人あたりアトラスGNIの変化:国ごとに、経済成長、インフレ、為替レート、人口増加といった要因がいずれも、1人あたりアトラスGNIに影響を及ぼす可能性がある。また、方法やデータの改善による改訂も影響を及ぼす可能性がある。2022年の1人あたりアトラスGNIの最新データは、こちら
  2. 分類基準値の変更:所得分類の基準値を実質的に一定に保つため、中国、日本、英国、米国、ユーロ圏のGDPデフレーターの加重平均である特別引出権(SDR)デフレーターを用いて、毎年インフレ調整が行われる。1人あたりアトラスGNIの新しい基準値は以下の通り:

1人あたりアトラスGNIの新しい基準値

 

下の図は、新年度、所得区分が移行する国々:

コロナ危機からの回復が続く中、2022年に異なる所得カテゴリーに移行した国のうち、予想通り、ほぼすべてがより高いカテゴリーへの移行だった。1人あたりアトラスGNIでは、約80%の国が2022年にコロナ前(2019年)と比較して改善を示した。

ガイアナと米領サモアはいずれも今年、高中所得国から高所得国のカテゴリーに移行する。ガイアナの1人あたりアトラスGNIの大幅な増加は、2022年に2倍以上に増加した石油・ガス生産量の増加による。名目上の増加は、石油・ガス価格の上昇によってさらに増幅され、海外への一次所得流出が大幅に増加したにもかかわらず、ガイアナの名目GNIは86.2%へと一気に伸びた結果、1人あたりアトラスGNIは60.0%増加した。アメリカ領サモアでは、2022年の1人あたりアトラスGNIの増加は、主に国連人口部が2020年の国勢調査から得られた新データを反映し、人口推計をマイナス18.3%と大幅に下方修正したことによる。

エルサルバドル、インドネシア、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区はいずれも、2021年のアトラスGNIが高中所得国の基準値に極めて近かったため、2022年のGDP成長が緩やかであっても高中所得国への分類に移行できる素地ができていた。エルサルバドル経済は2.6%の実質GDP成長率を記録し、インドネシアはコロナ後の力強い回復を続け、実質GDPは5.3%上昇した。ヨルダン川西岸地区・ガザ地区は、2021年のコロナ後の力強い成長(7.9%)に続き、2022年は高中所得国の基準を満たすのに十分な3.9%の成長を記録した。

ギニアとザンビアは共に今年、低所得国から低中所得国の分類に移行した 。ギニア経済は、政情不安と農業サプライチェーンの寸断にもかかわらず、好調な鉱業部門に支えられ、2022年は4.7%の成長率を記録した。ザンビアでは、2022年に4.7%の成長率を記録し、GDPデフレーターでみたインフレ率は8.6%となったことで、名目GNIは17.7%、1人あたりアトラスGNIは13.6%、それぞれ増加した。

ヨルダンは今年、より低い分類に移行した唯一の国となった。背景として、国連人口部が発表した推計人口が最新の国勢調査による新データを反映して8.6%と大幅に上方修正されたことが大きい。

 

詳細情報

世界銀行グループによる加盟国分類についての詳細情報はこちら各国の貸出内容別分類のページに、所得別、地域別、世界銀行の貸出状況別の一覧と、過去の分類へのリンクを掲載。一覧には、世界銀行加盟国に加え、人口3万人超のその他すべての国を含む。分類は、2022年に入手可能だったGNI数値を反映しているが、国によりさらに正確な最終推計値が発表された場合、修正の可能性がある。

 

2022年のGNI1人あたりGNIGDPGDP PPP人口のデータは、現在世界銀行のオープン・データ・カタログで入手可能。いずれも推計値であり、修正の可能性があることに留意されたい。お問い合せ:data@worldbank.org

[1] 経済と同義で使われる「国」という用語は、政治的独立を意味するものではなく、当局が個別の社会統計または経済統計を報告している地域を指す。
[2] 二つ以上の為替レートが使われている国では、必要なデータが入手可能な場合、現地通貨の米ドル換算に使用される為替レートをこれら複数の為替レートの平均とする。
[3] 基準年1987年以降のデータ。

 

本ブログ作成にあたり、同僚であるShwetha EapenCharles KouameTamirat YacobKathryn Youngから大きな貢献があった。ここに感謝の意を表する。

 

注:ここに記載の国別分類は、分析を目的とするものであり、変更があった場合も世界銀行から融資を受ける際の適格性に直接影響を与えるものではない。世界銀行の業務目的で使われる分類では、その国の適格性と世界銀行による融資の条件を決定するために、様々な追加基準が考慮されている。詳細は、世界銀行指令「世界銀行の融資条件」を参照されたい。


投稿者

Nada Hamadeh

Manager, Development Data Group, World Bank

Catherine Van Rompaey

Senior Economist, Development Data Group, World Bank

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